拾壱
「羅刹!」
タリムに誘われて、駆け付けた時には、既に羅刹は崩れ墜ちていた。
息も絶え絶えに、苦しそうな表情をしている。夥しい血を、腹から流している。此の儘では、羅刹が死んでしまう。
「羅刹っ……!」
涙ながらに、叫んでいた。
羅刹を救いたかった。
——《捧ぐ者》の力は、祷りの力。
神楽の言った言葉を思い出して、羅刹を抱き締めていた。
刹那の全身を光が包んでいる。刹那の両の手には、白く光る刻印が浮かび上がっている。温かな暉で在った。不思議な力が今、自分の中で息衝いているのが解る。今為らば、其の力の使い方が理解る。
刹那は内に在る想いを、一心に籠めた。
——羅刹を救いたい。
其の想いが願いと成り、祷りと成った。
そして其の祷りは、力と成った。
刹那から発せられる暉が、羅刹の身体を優しく包み込んで往く。次第に癒えていく傷。羅刹の血色は、みるみると良く成って往く。先程まで荒れていた呼吸も、穏やかな寝息に変わっている。其れを見て、刹那は安堵していた。
「其れが、貴方の力なのね……刹那ちゃん。羅刹を救ってくれて、ありがとう」
「ううん……。私はいつも、羅刹に護られているもの。私は少しでも、羅刹の力に成りたい」
「貴方の其の優しさが、羅刹を変えてくれた。本当に……感謝してるわ」
「ありがとう、タリムさん……」
急に眩暈がした。
力を使った所為だろう。
其れにしても、どうやって羅刹を運ぼうか。
眠る羅刹を見ながら、刹那は思案した。




