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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第八話【武芸】

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 羅刹の初撃を鞘で受けて直ぐ様、斬り払った。が、籠手で防がれた。


 足払いで、態勢を崩しに掛かる。其れも半歩、下がって躱される。僅かに()れた隙を衝かれて、羅刹の蹴りを腹に受ける。


「……ぐぅっ!」


 予想以上に重く鈍い。


 羅刹は蹴りの勢いを活かして、飛んで上段斬りを放って来た。


 (たい)を捻って躱しながら、廻し蹴りを放つ。


 ——確かな手応え。


 空中で回転しながら、羅刹は蹴りの勢いを逃がしていた。同時に短剣の一撃を放っている。刀で払った直後、額を鞘で割られていた。


 ——だらり、と垂れる鮮血。痛みは余り感じなかった。脳内でアドレナリンが、分泌されているからだろう。


 追撃を放つ羅刹。


 体を捻りながら、刀で受け流した。脇ががら空きに成っている。鞘で打つと羅刹は、苦悶の表情を浮かべていた。


 矢張り(さっき)の蹴りで、肋が何本か折れていたか。


 後ろに飛んで、羅刹は距離を取ろうとする。逃がす心算は無い。


 間髪入れずに間合いを、ぴたりと詰める。羅刹から繰り出される短剣の一撃を、刀で受け止める。


「……強い。本当に、強い!」


 肝胆(かんたん)感嘆(かんたん)の声が漏れ出ていた。此れ程迄に強き者と闘うのは、生まれて初めてで在った。心が充溢している。此れまで、貪婪に強さを求めていたのは、此の時の為だったのだ。


 蝟集された想いが今、結実する時が遂に来た。陶然とした感覚に身体が包まれている。


「お前も、強いな……」


 交わる声。


 重なる刃。


 高鳴る鼓動と抑え切れぬ衝動。ひりひりと身を焦がす様な、空気に包まれていた。此れ程までに満たされた事は、未だ(かつ)て無かった。


「だが、まだ全力ではない。俺は、本気のお前と戦いたい!」


 刀で払い、飛び蹴りを放つ。右の蹴りは、躱された。左の蹴りは、腕で受けて防がれた。身体を捻って、回転した勢いで再び右の蹴りを()る。


 空中での三連脚。


「技の名は蓮華(れんげ)。よもや……此の技を使える日が来るとは、夢にも思わなかったぞ」


 況してや、三連撃目に合わせて、短剣を放って来るとは思わなかった。


 右足の靭帯を斬られていた。


「諦めろ。其の足では、真面(まとも)に動けない。大人しく、其の刀を渡してくれれば、命までは奪わない!」


「興が醒める様な事を言うな。お前も武人ならば……解るだろう?」


 死ぬならば、戦いの中で死にたかった。


 互いに死力を尽くした上で、逝きたかった。


「成らば……俺も全身全霊の剣で、応えてやる!」


 羅刹の真っ直ぐな瞳には、一点の曇りも無い。


「礼を言う」



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