↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第七話【魔窟】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/163

壱



 霧深い山の中を、香流羅(かるら)は一目散に歩いていた。周囲は邪気に満ち溢れている。


 山全体には、異常な規模の結界。一体、誰が張ったのかは解らない。


 規模からして、個人の張った物では無い。


 大掛かりな結界装置と、大規模な人員を用いた結界だ。


 結界を破るのに、三日も掛かった。破ると言っても、小さな穴を空けた程度。其(そ)れでも、人間一人が通る入口としては、問題は無い。尤(もっと)も一日もしない内に、穴は塞(ふさ)がってしまうだろう。山中に人の気配は全く無い。代わりに死屍累々(ししるいるい)と築き上げられた獣達の屍(かばね)が、無数に転がっていた。普通の山とは、明らかに一線を画(かく)している。


 山の至る処(ところ)に、魔徒(まと)の気配を感じた。一つ一つの気配は弱いが、其(そ)の数は百を越えているのは明白で在(あ)る。どうやら山全体が、魔徒の巣と化している様だ。


 古(いにしえ)の時代から、人々に魔窟(まくつ)として恐れられた此(こ)の山の何処(どこ)かに、香流羅の目的の物が在(あ)る筈だ。


 ——人間よ、我にお前を喰わせてくれ。


 猪に取り憑いた魔徒が、囁(ささや)き掛けて来る。鼻の奥まで膠着(こびりつ)きそうな腐臭(ふしゅう)が、胸糞の悪い気分にさせる。香流羅は嘆息(たんそく)しながら、周囲の殺気を窺(うかが)った。


 ——我にも、喰らわせろ。


 背後からも、魔徒の気配がする。


 ——否(いい)や、我に喰わせてくれ。


 至る処(ところ)から、魔徒が狙って来ている。揃いも揃って、胸糞の悪い匂いを漂わせている。そう、此(こ)れは死の匂いだ。


「香流羅ぁ……帰った方が、良いんじゃない?」


 鷹の姿をした青丸が、不安げな声を投げ掛ける。


「情けない事を、言うな。赤丸、全部で何匹ぐらいだ?」


 狼の姿をした赤丸が、鼻を効かせて魔徒の気配を探った。


「全部で八匹だ。前方に三匹。後方にも、三匹。上に一匹。最後の一匹は……」


 隆起(りゅうき)する土の気配を、鋭敏(えいびん)に感じ取って一同は飛んだ。


 瞬時に青丸を、腕に宿らせる。青い光が羽根と成って、両の腕(かいな)を纏(まと)う。小太刀で鳶(とんび)に憑いた魔徒を斬り滅ぼして、光の羽根を前後の魔徒に送る。起爆札(きばくふだ)も織(お)り交ぜた攻撃を受けて、散々(ちりぢり)に飛散し、消滅する魔徒達。残った土竜(もぐら)に憑いた魔徒を、赤丸が噛み殺していた。


「こいつ等(ら)は、只の雑魚だ。さっさと、目的の物を見付けるぞ」


「解ってるよぉ、香流羅ぁ〜!」


「なら、さっさと行くぞ!」


 二匹の霊獣が、香流羅に附(つ)き従う。赤丸も、青丸も、神に与えられた神の眷属(けんぞく)だった。


 彼等を使役するには、氣(き)を操る術(すべ)を身に付けねば成らない。才覚の在(あ)る香流羅には、二匹の霊獣を使役(しえき)する程の操氣術(そうきじゅつ)が在(あ)る。其(そ)れでも御法院(みほういん)の歴史で見れば、香流羅は未々(まだまだ)、未熟で在(あ)った。故に香流羅は力を求めている。目的を遂(と)げるには、絶大なる力が必要だ。だからこそ、禁術に手を出そうとしている。


 神に与えられた【天涯(てんがい)の書】には、龍脈(りゅうみゃく)の流れが記されていた。龍脈とは、大きな氣(き)の流れで在(あ)り、氣は川の様に流れている。氣が集まる場所には、土地神が宿る。香流羅が契約している神も其(そ)の一つだ。此(こ)の書には、龍脈の歪みが生まれる場所と、其(そ)の周期が記されている。


 そして【人外(じんがい)の書】には、氣を操る術が記されている。即(すなわ)ち、龍脈の氣を取り込み、己(おの)が力とする術が記されているのだ。


 大きな氣を操る為には、魔徒の骨で造られた数珠(じゅず)が必要で在(あ)った。禁忌(きんき)の秘術だが、習得すれば格段に強く成れる。自分は強く成らなければ為(な)らない。


 此(こ)の名も解らぬ山の何処(どこ)かに、目的の物が祀(まつ)られている社が在(あ)る。其(そ)れを見付ける迄は、山を降りる気は無かった。


 静かな憎悪を胸に秘めながら、香流羅は屍の山を歩いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。