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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第七話【魔窟】

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 霧深い山の中を、香流羅かるらは一目散に歩いていた。周囲は邪気に満ち溢れている。


 山全体には、異常な規模の結界。一体、誰が張ったのかは解らない。


 規模からして、個人の張った物では無い。


 大掛かりな結界装置と、大規模な人員を用いた結界だ。


 結界を破るのに、三日も掛かった。破ると言っても、小さな穴を空けた程度。れでも、人間一人が通る入口としては、問題は無い。もっとも一日もしない内に、穴はふさがってしまうだろう。山中に人の気配は全く無い。代わりに死屍累々(ししるいるい)と築き上げられた獣達のかばねが、無数に転がっていた。普通の山とは、明らかに一線をかくしている。


 山の至るところに、魔徒まとの気配を感じた。一つ一つの気配は弱いが、の数は百を越えているのは明白でる。どうやら山全体が、魔徒の巣と化している様だ。


 いにしえの時代から、人々に魔窟まくつとして恐れられたの山の何処どこかに、香流羅の目的の物がる筈だ。


 ——人間よ、我にお前を喰わせてくれ。


 猪に取り憑いた魔徒が、ささやき掛けて来る。鼻の奥まで膠着こびりつきそうな腐臭ふしゅうが、胸糞の悪い気分にさせる。香流羅は嘆息たんそくしながら、周囲の殺気をうかがった。


 ——我にも、喰らわせろ。


 背後からも、魔徒の気配がする。


 ——いいや、我に喰わせてくれ。


 至るところから、魔徒が狙って来ている。揃いも揃って、胸糞の悪い匂いを漂わせている。そう、れは死の匂いだ。


「香流羅ぁ……帰った方が、良いんじゃない?」


 鷹の姿をした青丸が、不安げな声を投げ掛ける。


「情けない事を、言うな。赤丸、全部で何匹ぐらいだ?」


 狼の姿をした赤丸が、鼻を効かせて魔徒の気配を探った。


「全部で八匹だ。前方に三匹。後方にも、三匹。上に一匹。最後の一匹は……」


 隆起りゅうきする土の気配を、鋭敏えいびんに感じ取って一同は飛んだ。


 瞬時に青丸を、腕に宿らせる。青い光が羽根と成って、両のかいなまとう。小太刀でとんびに憑いた魔徒を斬り滅ぼして、光の羽根を前後の魔徒に送る。起爆札きばくふだり交ぜた攻撃を受けて、散々(ちりぢり)に飛散し、消滅する魔徒達。残った土竜もぐらに憑いた魔徒を、赤丸が噛み殺していた。


「こいつは、只の雑魚だ。さっさと、目的の物を見付けるぞ」


「解ってるよぉ、香流羅ぁ〜!」


「なら、さっさと行くぞ!」


 二匹の霊獣が、香流羅にき従う。赤丸も、青丸も、神に与えられた神の眷属けんぞくだった。


 彼等を使役するには、を操るすべを身に付けねば成らない。才覚のる香流羅には、二匹の霊獣を使役しえきする程の操氣術そうきじゅつる。れでも御法院みほういんの歴史で見れば、香流羅は未々(まだまだ)、未熟でった。故に香流羅は力を求めている。目的をげるには、絶大なる力が必要だ。だからこそ、禁術に手を出そうとしている。


 神に与えられた【天涯てんがいの書】には、龍脈りゅうみゃくの流れが記されていた。龍脈とは、大きなの流れでり、氣は川の様に流れている。氣が集まる場所には、土地神が宿る。香流羅が契約している神もの一つだ。の書には、龍脈の歪みが生まれる場所と、の周期が記されている。


 そして【人外じんがいの書】には、氣を操る術が記されている。すなわち、龍脈の氣を取り込み、おのが力とする術が記されているのだ。


 大きな氣を操る為には、魔徒の骨で造られた数珠じゅずが必要でった。禁忌きんきの秘術だが、習得すれば格段に強く成れる。自分は強く成らなければらない。


 の名も解らぬ山の何処どこかに、目的の物がまつられている社がる。れを見付ける迄は、山を降りる気は無かった。


 静かな憎悪を胸に秘めながら、香流羅は屍の山を歩いていた。



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