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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第六話【食堂】

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53/162

肆



 町外れに建ち並ぶビルの一室に、ニコニコ金融と言う名の事務所が在(あ)った。


 違法な金利で金を貸す所謂(いわゆる)、闇金と言う奴だった。事務所に居る男達の顔は皆、一様に厳(いか)つい。蒐(あつめ)られた視線の先には、華の姿が在(あ)る。


 全裸で正座をしている華を、オールバックの男——田辺が睨み付けていた。眼が合わぬ様に、華は俯(うつむ)いている。


「君さぁ……約束した事、覚えてる?」


 ニコニコ金融の社長が、穏やかな口調で華に問い掛ける。未(ま)だ若い男で在(あ)った。険しい連中とは対照的に、とても穏やかな表情(かお)をしている。


「はい……。けど、もう少しだけ待って下さい!」


 恐る恐る華は顔を上げていた。其(そ)の拍子に田辺と目が合い、僅かに弛緩(しかん)していた筋肉が再び強張った。


「てめぇ、嘗(な)めてんのか。返済期限は、昨日までだろうがっ!」


「田辺、煩(うるさ)い。黙ってろ」


 抑揚の無い声音で、社長は田辺を諫(いさ)める。其(そ)れが気に喰わなかったのか、田辺は華に無言の圧力を掛ける。そんな田辺を無視して、社長は華を見た。


「昨日から、居酒屋のバイトも始めたんです。ですから、もう少しだけ待って下さい。お願いします!」


 必死に懇願(こんがん)する華。


 嘘ではなかった。きちんと働いて、真面目に返済する心算(つもり)でいた。けれども今回だけは、どうにも都合が附(つ)かなかった。


「良いよ。今回だけは、ジャンプさせてあげるよ」


 五万円を華の眼前に投げ捨てて、社長は胸ポケットから《うまか棒》を取り出した。ジャンプとは、更に追加融資を受けて、利息分だけを返済する事で在(あ)る。其(そ)の場は凌(しの)げるが、とても危険な行為で在(あ)る。


 安堵に表情を緩める華。


「けど、忘れるな。次は、容赦しない」


 其(そ)の声には、研ぎ澄まされた刃物の様な鋭さが在(あ)った。田辺の見掛けだけの恫喝(どうかつ)とは、全く比に為(な)らない恐怖を感じて、華の心は恐怖に満ちていた。


 一瞬で華の表情が強張ったのを確認して、社長は欠伸(あくび)をした。詰(つ)まらない、と謂(い)った様子で投げ掛ける。


「君、もう帰って良いよ」


「有(あ)り難(がと)う御座(ござ)います!」


 頭を地面に擦(こす)り付ける華。そんな自分が、酷く惨めで在(あ)った。何故(なぜ)だか涙が零(こぼ)れていた。悔しさと恐怖。そして嘆きの感情が、そうさせている。そんな自分が、愚かしく思えた。どうにかして、此(こ)の現状から抜け出したかった。死ぬ気で働いて、必ず完済してみせる。


 ——人間とは、愚かな者だな。


 卑(いや)しい笑い声と共に、頭の中で声が響いた。


「どうかしたか?」


 不思議そうに周りを見渡す華に、男の一人が問い掛ける。


「いえ、何でも有りません……」


 華は慌てて衣服を纏(まと)って、事務所を後にした。



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