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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第六話【食堂】

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 冬の寒さに包まれた町は、何処どこか寂しく感じられた。町行く人も何処かせわしなく見え、よそよそしく思えた。


 の中を一人、歩く健吾。寒風にさらされる中、早足で歩いている。


 懐には小銭を両替して得た千円札が、三枚。残った小銭で、煙草と缶コーヒーを買っていた。僅かな金でったが、健吾に取っては大金に等しかった。


 本来ならば、大切に使うべきでった。けれども愚かにも、健吾はパチンコ屋の前で立ち止まっていた。パチンコ【玉出】の看板を眺めながら、健吾は紫煙しえんを吐き出している。


 たったの三千円で勝てる程、パチンコは甘い物ではない。だが、三千円で勝てる事も在るのも又、事実ではる。


「さて、行くか……」


 きらびやかなネオンに誘われる様に、健吾はパチンコ屋に吸い込まれて行った。


 喧騒けんそうに包まれる店内を、健吾は歩いている。


 ゆっくりと台を品定めしながら、歩いている。一円パチンコのコーナーを、行ったり来たりとしている内に、る台に視線を落としていた。


 本日、大当たり回数が零。既に二千回転以上も回っていた。正に、大ハマり台でる。


 健吾はパチンコに詳しい訳ではない。と言うよりも、今まで数回しか打った事がなかった。はっきり言って、パチンコ初心者でる。しかも、一度も勝った事が無かった。


 人生で一度でも良いから、パチンコで勝って良い思いをしてみたかったのだ。今の自分は底辺に近い存在だ。そんな自分には、目の前の台がお誂(sつら)え向きな気がした。


 台に着き、千円札を入れる。玉貸しボタンを押して、玉を出すとハンドルに手をった。


 ——どうか、勝てます様に。つたなはかない願いを込めて、ハンドルを右に捻る。次々に打ち出されるパチンコ玉。の内のいくつかの玉が、ヘソと呼ばれる箇所に吸い込まれる。抽選が始まり、派手な演出に台は彩られる。大音量の期待が、玉と共に飲み込まれてく。


 数分後には、千円分の玉は全て飲み込まれていた。


 二千円目の札を投入する手は、僅かばかり震えていた。はやる気持ちと焦りが、秘めやかに心を撫でけている。パチンコ屋独特の空気に、健吾は飲み込まれている。


 煙草に火を着けて、健吾は台を睨み付けていた。


 ——ちっとも、当たらない。音と見た目が派手なだけで、一向に当たるきざしが見られない。不安が胸奥きょうおうを満たしている。既に健吾は、パチンコを打った事を後悔していた。れでもどうしても、勝ちたかった。華の初出勤の門出を、買った金で祝ってやりたかったのだ。けれど、当たらない。穏和おとなしく三千円で、ささやかに祝ってやれば良かったと心底、後悔していた。残る千円では、してやれる事なんて高が知れている。


 こうなったら、当てるしかない。けれど、胸中を不安が満たしている。


 本当に、パチンコなんかで勝てるのだろうか。自分でパチンコ屋に来ておきながら、一抹いちまつの希望すら残っていない。


 ——と、の時でった。液晶画面を、でかでかと『激熱』の二文字が、金色の文字で埋めていた。一際ひときわに派手な効果音が鳴り響いている。隣りで同じ様に飲まれている中年女性が、恨めし気に此方こちらを見ていた。


 パチンコ初心者の健吾にでも、の意味を理解する事が出来た。派手な演出を経て、派手なギミックが作動して、SPスペシャルリーチが発生した。


 いやおうでも、期待は高まっていく。激しく胸を打つ己の心音が、健吾の緊張を最高潮にまで高めていく。実際には短い時間ではったが、健吾には相当な時間に感じられた。


 長いSPリーチの果てに、再びギミックが作動して、液晶画面をスリ—セブンが埋める。


「当たった……」


 信じられないと言った様子で、健吾は人生初の大当たりを体感した。驚きや喜びよりも先に、理解が追いいて来ないとった様子でった。


 右アタッカーを狙え。


 画面上に浮かぶ文字に従って、狼狽うろたえながらも、健吾はハンドルを右一杯に捻った。


 下皿から大量に吐き出される玉を見て、健吾はようやく笑みを浮かべていた。


「すげぇ……」


 間の抜けた声を上げていた。



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