陸
「魔徒に憑かれそうな生徒に、心当たりは在る?」
タリムが刹那の頭の中に直接、語り掛ける。
「解らないわ」
「魔徒は、人の心の闇に付け込むの。何処か、心に陰りが在る人を知らない?」
そう言う意味では、殆ど全ての人間が該当すると刹那は思った。多感な年頃で在る女子高生には、悩みの種は尽きない。好きな人がいる。勉強が出来ない。嫌いな人がいる。ニキビが出来た。親が煩い。飼っているペットが、いつもより元気がない。部活が忙しい。人間関係が、上手くいかない。
数え上げれば、切りがない。
刹那ぐらいの年齢の女子ならば、ほんの些細な事でも悩みの種となった。そして、其の悩みの種は次第に育ち大きくなる。
きっと、魔徒に付け込まれる様な、心の闇へと成長する。
此の学園の全ての人間が、魔徒に憑かれる可能性を孕んでいた。
「御法院さん、ちょっと良いかしら?」
「貴方は、えっと……?」
隣りのクラスの生徒だったが、名前が解らなかった。
「私は、山下よ。少し、話しが在るの。ついて来て」
刹那には、山下に呼び出される心当たりはなかった。そもそも、話すのも初めてだった。
山下の事で解っているのは、神峰史華親衛隊で在る事ぐらいだ。
「直ぐに終わるの。ほんの少しだけ、お願い。ね?」
「解ったわ」




