表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第二話【鬼子】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/111



羅刹らせつ。誰かが、結界に入ったみたいよ」


魔徒まとが現れたか?」


 何処どこにも、邪悪な気配は感じられなかった。


「どうして、あいつが此処ここに居る?」


「どうやら、此処の生徒の様ね」


「そんな事を、聞いているんじゃない」


 羅刹の視線の先には、刹那せつなが居た。何故なぜだか解らないが、苛立ちが秘めやかに心を撫でて、落ち着かなかった。こんな事は、初めてだった。思い通りにらない感情を胸奥きょうおうに押し込んで、刹那を睨みける。


 の結界の中には、普通の人間は入れない。矢張り、刹那には不思議な力がる様だ。本人にの自覚はないのだろうが、力を持つ者は魔徒に取っては極上の餌と成り得る。


 つまりれだけ、魔徒に狙われ易いと言う事だ。刹那がどうろうが、自分にはどうでも良かった。


「貴方、どうして此処に居るのよ?」


 此方こちらに気付き、刹那が怪訝けげん表情かおを向ける。育ちが良さそうな、けがれの無い瞳に見詰められて、思わず眼を背けていた。


れは、此方こちらの台詞だ。どうやって、入って来た?」


「おかしな事を言うのね。私は、此処の生徒よ。普通に入って来たに決まってるじゃない。れよりも、勝手に入って来たら駄目じゃない!」


 羅刹が苛立ちながら、口を開こうとした時だった。


「魔徒が、学園内に入ったわ」


「誰?」


 いぶかる刹那。


「奴は、何処どこに居る?」


 そんな刹那を無視して、羅刹は口を開く。談論風発だんろんふうはつを始めている暇は無い。


「残念ながら、結界の中には居ないわ」


「どういう事だ?」


「何らかの力で、結界を中和しているみたい。厄介ね」


 まるところ、魔徒を結界内に閉じ込める事が出来ないと言う訳だ。


れに此処は、人が多すぎるわ。誰が魔徒なのか特定、出来ない」


「不味いな……」


 羅刹は闘う以外の事は、全てが不得手で在った。


 人の暗幕あんまく遮蔽しゃへいされている魔徒を、炙り出すのは至極困難しごくこんなんだ。学校とう偏差的空間は、格好の隠れみのだとう訳だ。


「一体、誰なの。何処どこに居るの?」


 困惑する刹那。


 不思議そうに、辺りを見廻みまわしている。


「お前、タリムの声が聴こえるのか?」


 刹那との齟齬そごに一々、苛立つ羅刹が問い掛ける。


「タリムって言うの?」


「どうやら、此の子。《禍人まがびとの血族》の様ね」


「矢張り、そうか」


 《禍人の血族》とは神と呼ばれる存在と契約し、魔徒を倒す術を得た一族の事だ。其の存在は、神と呼ぶには余りにも禍々しい存在で在る。


 の世界には、数多あまたの神々が存在している。其の土地に眠る神と契約した者は、力を得る為に対価を支払わなければならない。


 《血の定め》と《地の掟》で在る。


 《血の定め》にり、禍人まがびとが得た力は、子や孫へと継承され続ける。当人の意思に関わらず、生まれた時から神に仕える事を宿命付けられるのだ。


 そして、神の定めた掟を守らなければならない。《地の掟》は絶対で、抗う術はない。又、神のゆるしなくして、其の土地の外に出る事も出来なかった。


「良い事を、思い付いた」


 妖しい笑みを浮かべる羅刹。


 其の視線の先には、刹那が居た。


「羅刹、貴方……まさか?」


「そうだ。こいつを、囮に使う」


「駄目よ、そんなの。危険だわ!」


「一体、何の話?」


 当の本人は、至って暢気のんきな様子だった。


「こいつは、魔徒に取って極上の餌だ」


「魔徒って、まさか。の間みたいな怪物が又、現れたの?」


「そうだ。そいつは、此の学園の生徒に紛れている。放っておけば、罪もない生徒達が奴の餌食になる。まぁ、俺には関係ないがな」


 冷淡な口調で、最後を締める。


「駄目よ、そんな事。放って、置けないわ!」


 刹那は表情を強張らせて、喰って掛かった。


「私に出来る事なら、何だってする。だから、皆を護ってあげて。お願い、羅刹!」


 真っ直ぐな瞳で、羅刹を見据える。其の瞳には、覚悟の光が灯っていた。


 迷いの無い純粋な意気地いきじに当てられて、羅刹の心は乱されていた。他人の為にどうして其処そこまで出来るのか、羅刹には理解、出来なかった。苛立ちは消え失せて、刹那に対する純粋な興味が残っていた。


「貴方の覚悟は、解ったわ。なら、私の分身を授けるわ、刹那ちゃん」


 白く半透明な石が付いたペンダントが、虚空こくうに現れた。


「其れを付けていれば、貴方を危険から護ってあげれるわ」


「ありがとう、タリムさん」


「なら、決まりだな。俺達は、此処で待っている。頼んだぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ