サクヤVSテンホー
「……いい勝負だった」
倒れているチーホーを見ながらオモスは呟いた。
オモスの勝利に闘技場が沸く。
その歓声に応えるように、オモスが高々と拳を上げると、闘技場は更なる歓声に包まれた。
「ムッツリだな」
「ですね」
カイトの言葉に、リーヴは頷くのだった。
「サンダースパーク」
テンホーの魔法がサクヤを襲う。
「くっ」
サクヤはなんとかそれを躱した。
魔法の発動は相手の方が早い、撃ち合いをすれば負けるだろう。現に今も先に魔法を放たれ、描写が破棄された。
火力を期待されるソーサラーは、強力な魔法が使えるほど評価される。
が、それはあくまでパーティーでの話だ。パーティーなら他の仲間が描写の時間を作ってくれるからだ。
しかし、一騎討ちでは違う。悠長に描写をしている時間などないのだ。
「くっ、やはり魔法の撃ち合いでは不利ね」
サクヤは唇を噛む。
魔法の発動はチーホーの方が圧倒的に速い。サクヤは躱し続けてチャンスを待つ以外に方法がなかった。
描写が雑な分、威力は落ちるが、さすがにまともに食らうのは危険だ。ミノワなら気にせず突撃しそうだが到底真似ができるものではない。
それに今のチーホーに油断や過信はない。一撃食らえば必ず追撃してくるだろう。そうなると二撃目、三撃目を躱すことは無理だ。つまり一撃でも食らえばこの勝負は負ける。
とにかく動く、テンホーの狙いが定まらないようにサクヤは動き続けた。
そんなサクヤに攻撃を当てようと魔法を放つテンホー。
テンホーも必死だ。
攻撃を躱し続けるサクヤを見てテンホーは分かっていた。
身体能力は圧倒的にサクヤが上、懐に入られたら為す術はないと。
魔力切れになる前に当てる。
体力が切れる前に懐に入る。
一瞬たりとも気が抜けない攻防の中、二人の精神はすり減っていく。
「あなたの攻撃なんて当たんないわよ」
サクヤは、まだまだ余裕というように笑みを浮かべた。
「クソ、ちょこまかと」
サクヤの挑発に、テンホ―が苛立ちを見せる。
「サンダースパーク、サンダースパーク、サンダースパーク」
ムキなったテンホ―は魔法を連発するもサクヤは冷静に躱す。
「はぁ、はぁ、はぁ」
!!!
作戦が功を奏し、マナを消費し過ぎたテンホ―の動きが一瞬止まる。
サクヤはそれを見逃さない。テンホーとの間合いを詰めるように走り出す。
「えい!」
走っていたサクヤは突然ジャンプし、その両足をテンホーの顔面へ叩きつけた。
『ドロップキック』
勢いの乗ったドロップキックを食らいテンホ―は地面を転がった。
精神のすり減る攻防を制したのはサクヤだった。ミノワの特訓で培った精神力は伊達ではない。
とはいえ、サクヤもギリギリだった。
一撃でも食らえば終わりという中で戦っていたのだ、そのプレッシャーは計り知れない。
先ほど余裕ぶってはいたが、実は余裕はんてなかったのだ。
「よっしゃー」
ガッツポーズをするサクヤに観衆は沸き立った。
(気持ちい~)
観衆の視線や歓声にサクヤは快感を覚えた。
「うう……」
ドロップキックを受けたテンホーは気を失ってはおらず立ち上がってきたが、ダメージは明らかで、目の焦点は合っておらず、足下も覚束ない状態だった。
「いくわよー!」
サクヤはテンホーの背後へ回り込み、観衆に向かってそう叫ぶと会場のボルテージは更に上がった。
サクヤはテンホーの体に手を回すと、そのまま抱えるようにブリッジをする。
『ジャーマンスープレックス』
大きな弧を描いたサクヤのジャーマンに、テンホーの意識は途切れた。
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