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#70 狐巫女の嫁入り

狐の亜人の村に泊まらせて貰った僕達は巫女様を助けたお礼を言われた後、奴隷にされた仲間の話を聞いて来た。そこで気になったのが狐の亜人の尻尾の数だ。それぞれ数が違っており、どうやら尾が多い方が力が強いらしい。


村人と話していると僕に巫女長様の事を教えてくれた少女の両親にも会うことが出来た。


「そうですか……あの子が巫女様の事をあなたに伝えたんですね」


「立派になって……すみません。生きていることが分かって、つい」


「気持ちは分かりますから全然大丈夫ですよ」


我が子が生きていることが分かったんだ。涙ぐらい出るよね。そして僕は黎明が話していた遮断結界について、聞いてみた。


「先代の巫女様達なら何人か使える人がいたと思いますが我々では無理ですね」


「そもそも結界が貼れるのは選ばれた巫女のみです。我々は戦闘特化で結界は使えないんですよ」


どうやら狐の亜人はガロロ達とは違い、それぞれ担当を分けているようだ。説明によると近接戦闘、魔法、サポート特化の三種類のタイプがいるらしい。これは今までの亜人には無かった特徴だ。因みに巫女という特別な狐の亜人は全て使えるオールラウンダーなんだそうだ。


「亜人の中でも一番バランスが取れているね」


「あぁ。お前達の中には遠距離攻撃が出来る奴はいるがそれに特化している者はいなかったし、結界のサポートも防御面においてかなり有効だろう。個の集団というより既に軍隊として取り立っていると言っても過言じゃないだろうな」


耳が痛い話だよ。これでも頑張って来たんだけどな。ここで結界内では僕の遠距離念話が出来ないことが判明した。本当に優秀な結界だよ。これで守るだけじゃなく、相手を閉じ込めることにも有効であることが分かったからね。


『この結界なら奴隷の首輪の位置を知らせる機能とか封じられそうだけど』


『はい。しかし確実ではないかと』


『試す必要があるか……でも効果があるのかどうかわからないから確かめようがないね』


奴隷の首輪の信号か何かを感知しないと確かめようがない。誰か感じ取れればいいんだけどな。そんなことを考えていると賢吾が狐の女の子にお酌をしてもらう。


「うむ。これから葵達に連絡をするんだろう? 彰久達に綺麗な狐のお姉さんにお酌をしてもらっていると伝えてくれるか?」


「二人が暴走してもいいの?」


「それもありかと思ったがやはり無理か……さっきのは忘れてくれ。あいつらが俺達と合流出来た時に話すとしよう」


その時はきっと僕も巻き込まれるんだろうな。僕は結界の外に出て、ハクア達と葵達、リースに定時連絡を済ました。


それから数日村に滞在されて貰っていると狐の亜人達の技術力の高さに驚いた。ちゃんと味付けされた料理が出された。これらの物は畑で作られていた。


他にも手作りの織機や染料、箒や鍬などを見せて貰った。武器としては弓、槍、薙刀、刀などがあったが全て木製。ここでは鉄などが手に入らないからな。ただ陶器を作る技術はあるようだ。皿や湯呑は全て陶器だったからね。


武器として使えるのか疑問を感じていると模擬戦をさせて貰うことになり、ガロロと武器を扱う狐の亜人が戦うことになった。


「行くぜ!」


「こい! 黒炎!」


狐の亜人が構えている木刀に黒い炎が宿る。


「なんだよ!? それ!? かっこいいな!」


ガロロの意見には賛成するしかない。見た目は漆黒の炎の剣にしか見えないからな。


「そうだろう。我々は武器にスキルを付与して、戦うのだ。勿論これに触れると燃えるから気を付けるんだな」


そして二人の戦いが始まるとガロロは黒炎の木刀を警戒して、防戦となる。


「なるほどな。ただ炎を放つだけだと攻撃は読まれやすい。しかし武器に宿せば攻撃が読まれにくいだろうな。これは付与するスキルを使っているのか?」


「いいえ。火炎操作として火を操るスキルを使っています。なのでああいう事も出来ます」


「黒炎竜!」


「うお!? あっぶね。今度は俺の」


「黒炎!」


「だー! その状態でも火を出せるのかよ!」


木刀に宿った黒炎が鞭のように動いて、ガロロに襲い掛かる。しかしガロロもそれを躱している。流石の身のこなしだ。しかし近距離と遠距離での攻撃にガロロは手を焼いているとガロロもここで本気になる。


「旋風爪!」


ガロロの両手に風が高速で渦を巻く。それを見た狐の亜人も余裕がなくなり、目付きが本気になる。


「らぁああ!」


「はぁああ!」


竜巻の爪と黒炎の木刀がぶつかり合うと、木刀が折れる。


「貰ったー!」


模擬戦なのに思いっきり攻撃をしたガロロだったが攻撃が命中した瞬間、狐の亜人が木の丸太に変わる。あれは変わり身の術!?


「何!?」


「ここまでにしておきましょうか。武器を壊されたので」


「あん? そんなの関係ねーよ! もっと戦い」


「はーい。そこまでにしておこうね」


「うひゃい!?」


ガロロの尻尾を握って、止めるとガロロが変な声を出してしまう。みんなが思わず笑うとガロロが僕を恨みがましく睨んで来た。


「訓練って僕は言ったはずだよね? 今のは本気で攻撃した罰だよ」


「う……すまねぇ……アニキ。だから尻尾を離してくれ……スキル……発動しているから」


僕が尻尾を離している振り返るとエルが尻尾を抑えていた。相変わらずエルにとってはトラウマのようだ。


「なんというか色々負けた気がするね」


「そんなことはありません! 私達にはこれがあります!」


そういって、エルが取り出したのはカードゲームのデッキ。確かに娯楽はここには少ない。子供達がけんけんぱで遊んでいるくらいだ。これは逆に言うとみんなが真面目に仕事をしているということになる。


ただこんな狐の亜人達にも抱えている問題があった。まず食料。結界が貼っているとモンスターや野生の動物まで弾いてしまうので、肉を手に入れる為には定期的に結界を解除する必要があるらしい。しかもそれですぐに獲物がやって来てくれるかが大きな問題となっている。


更に水の問題もあった。狐の亜人達の縄張りには川は流れておらず、結界の外に出て、水を汲みに行かないといけないそうだ。これを狙っているのが人間の奴隷商人らしい。あの狐の少女もこの時に奴隷商人に捕まったそうだ。


賢吾とラムーナの町を散策した時に気付いたことだけど、亜人を捕まえるために様々なアイテムが開発されていた。僕達が見つけたのだと匂いや音、魔力で亜人達を誘惑するアイテムがあった。この情報を皆に伝えた。これで少しでも被害が減れば御の字だ。


「猫の亜人や狐の亜人は人間から狙われているんだよねー」


「そうなの?」


「この二つの種族は人間を誘惑して繁栄してきた種族だからねー。ほら、美人さんやかっこいい人しかいないでしょー?」


ホゥにそう言われると確かに狐の亜人達は顔や体型のポテンシャルは高い気がする。


「だから気を付けた方がいいよー」


「星空にその忠告は無意味だぞ? 気を付けていても巻き込まれるからな」


「そうだよねー。エルちゃん達も大変だー」


ホゥと賢吾は本当に仲が良いと思う。そして遂に巫女長様が目を覚ました報告を受けて、僕は無事の確認のために巫女長様と面会する。


「失礼します」


「この度はわたくしの命を助けて頂き、誠にありがとうございます」


いきなり座礼(ざれい)をされてしまった。そして顔を上げた巫女長様を見るとおっとりしていそうなお姉さんのような雰囲気がある子だった。


というか僕は裸のこの子を抱きしめたんだよね。あれはどうしようもない状況だったと思うけど、抱きしめた時の膨らみの感覚が今になって蘇って来た。物凄い痛みを感じてたはずなのにどうしても僕はそんなことを覚えているんだ!?


「その……わたくしの体とか見たりしましたか?」


「え!? 見てない見てない! あの時は振り返ったら、顔だったし、見る余裕なんて無かったよ」


なんか見ているような慌て方になってしまった。天地神明(てんちしんめい)に誓って見てはいない。


「ふふ。そうですか。あ、わたくしの名前はミイネと申します。わたくしが傷付けた怪我は大丈夫でしたか?」


「全然大丈夫だったから気に無くていいよ」


滅茶苦茶痛かったけどね。わざとじゃない事は黎明が証言しているし、最初の攻撃は思ったよりも深い攻撃じゃなかった。これは彼女が無意識の内に攻撃を引いた可能性があると黎明が言っていた。だから責めるつもりはない。こういう攻撃には慣れっこだしね。


「わたくしにはあの時の記憶が無くて……ただ温かい手と優しい声だけ覚えています。よろしければ怪我を見せてくれませんか?」


「別にいいけど」


僕は上半身を見せる。するとミイネさんは僕の両肩を手で触れて来る。


「……本当にすみませんでした。これはわたくしの罪です。命も救われましたし、この身をあなた様に捧げさせて貰います」


「……はい? ってちょっと待って!? 何で服に手をかけるの!?」


「……これがわたくしなりの責任の取り方だからですが?」


「僕が大丈夫って言っているんだから責任を取る必要は無いよ!?」


「そういう訳にはいきません!」


おっとりしているように見えたけど、この子滅茶苦茶頑固だ。二人とも引かないでいるとミイネが攻め手を変えて来る。


「もしかしてわたくしは身体は好みと違いましたか?」


ミイネの悲しそうな声と上目遣い攻撃が来た。絶対狙っているよね?ここで否定するとあっきーやなおやんどころか同級生男子一同から正気を疑われる事態になると思う。それだけミイネは美人だ。しかし僕も引く訳には行かない事情がある。


「そういう訳じゃないよ。ただそう言うのは成人を迎えてからじゃないといけないってというか」


「成人とは何ですか?」


あ、成人の考えはないんだ。


「成人は大人になるって意味かな? 僕達の世界じゃあ、二十歳で成人を迎えるんだ。僕はまだ大人の男じゃないからそう言うことは出来ないんだよ」


婚姻して子供を育てる人はいるけどね。僕としてはちゃんとお金を溜めて、子供を育てられる状況になってから結婚とか考えたいと思っている。結婚する相手に恵まれればの話だけどね。


「異世界にはそういう決まりがあるんですね」


「うん。ってそうか。僕達の世界って言ったから分かったんだね」


「はい。わたくしの直系のご先祖様は異世界の人間でしたから詳しいんですよ。ここの社や鳥居、服や畑の作り方や織機を教えてくれたのはご先祖様なんです」


やっぱりそういう事だったか。というか本当に世界はどれだけ勇者召喚をして来たんだろうね。話によると勇者同士で殺し合いもした歴史があるみたいだし、相当な数の勇者召喚の歴史があったと見るべきなんだろう。


「う~ん。そういう決まりがあるなら仕方ないですね」


「わかってくれて良かっ」


「では、これからわたくしを旦那様の近くに置いてください」


「何でそうなるの!? というか君は狐の亜人達にとって重要な立場にいるんじゃないの?」


巫女長様とか呼ばれてたし、リーダーか何か特別な役割の人だと思っていた。


「確かにわたくしは狐の亜人の代表を務めてますけど、嫁入りの時は外に出ることが決まりで認められてます。同じですね」


考えてみればその決まりがあるのは当たり前かも知れない。僕が何か言おうとするとミイネは耳を折りたたんだ。


「もうこれ以上は聞こえませ~ん」


「絶対聞こえてるでしょ!?」


「ふふ」


満面の笑みで返された。ダメだ……この鉄壁の笑顔の前でこれ以上、何を言っても無駄だと僕は悟った。こうしてミイネが僕達の仲間に加わることが決まったことを皆に説明する。


「「「「旦那様!?」」」」


エル達は驚きの声を挙げる。そうだよね。僕の呼び方には色々言いたくなるよね。そして賢吾が言ってくる。


「あっきーとなおやんがこれを知ったら、刺されるぞ。カナタ。あいつらは巨乳の優しいお姉ちゃんがタイプだからな」


「あはは……はぁ~」


「旦那様は命を狙われているんですか? 安心してください。わたくしが近くにいる限り、旦那様に傷一つ付けさせません。こう見えて結構強いですよ」


識別させて貰った。


名前 ミイネ 獣人族Lv62

属性 火、聖、闇


生命力   202

魔力    314

筋力    150

防御力   128

魔法攻撃力 304

魔法防御力 171

走力    204

知力    166


スキル


熱爪 神楽 仙気 妖気 透過 

指揮 天耳通 他心通 神足通 念動力 

聖火 邪炎 火炎操作 略式詠唱 火魔法 

聖魔法 闇魔法 時空魔法 妖術 占術 

幻術 霊符 護符 式神召喚 守護結界 

瞬動 瞑想 身代わり 呪撃 分身 

見切り 炎障壁 息吹 獣化 神降ろし 

女王の加護


称号


《巫女の長》、《魔道を歩む者》、《仙道を歩む者》


熱爪:高熱を帯びた爪で引き裂くスキル。

神楽:神に捧げる舞を踊り、味方全てスタータスを強化するスキル。ただし踊っている最中は踊り以外に他の行動をすることは出来ない。また舞を止めた瞬間に強化は消えるので、注意。

透過:武器でのガードや防御スキルをすり抜けるスキル。

他心通:指定した相手の心を読むスキル。

聖火:聖属性と火属性の炎で相手を攻撃するスキル。

邪炎:魔属性と火属性の炎で相手を攻撃するスキル。

火炎操作:火を操る事が出来るスキル。

略式詠唱:魔方陣を簡略化することが出来るスキル。

火魔法:火属性の魔法が使えるようになるスキル。

聖魔法:聖属性の魔法が使えるようになるスキル。

時空魔法:時間と空間を操る魔法が使えるようになるスキル。

占術:天気予報などの未来を占うことが出来るスキル。

幻術:幻を見せるスキル。

霊符:攻撃魔法や攻撃スキルを封じた札を作ることが出来るスキル。種類は様々で直接攻撃に使用する物から罠に使う物などがある。魔力がある者なら誰でも使用することが出来る。

護符:補助魔法や補助スキルを封じた札を作ることが出来るスキル。種類は様々で貼り付けた者の状態異常を直したり、大規模な結界を貼る際に使用される。魔力がある者なら誰でも使用することが出来る。

式神召喚:紙に封じた妖怪や霊、神霊を一時的に召喚することが出来るスキル。魔力を消費して使用する。消費量は式神の質と時間によって、変化する。

瞑想:何もしない代わりに生命力と魔力を大幅に回復することが出来るスキル。また状態異常の効果を弱めることも出来る。

炎障壁:炎の障壁を作るスキル。これに触れると火属性のダメージを受ける。

神降ろし:自身の身体に神様を宿すことが出来るスキル。その間、自身に意識が無くなり、使用後は数週間、動けなくなる。

女王の加護:女王になった物が得られる加護。近くになる同属の数だけ自身のステータスを増加させる。


滅茶苦茶強い。サポート、魔法特化と見るべきだろうか。しかし爪での攻撃もある。まさにオールラウンダーだ。というか心を読むとか反則級のスキルだと思う。そこでさっきのやり取りを思い出す。何か僕の事を察しているような印象を受けた。黎明達にガードを頼むことにした。心を読まれて、嬉しい人はたぶんいないよ。


ここで使える魔法について、聞いてみた。


「火魔法はフレイムボール、フレイムアロー、フレイムシャワー、フレイムピラー、ヒートレイ。聖魔法はヒール、エリアヒール、ヒーリング、クリア、エクソシズム。闇魔法ダークボール、シャドースワンプ、ライフドレイン、マジックドレイン。時空魔法はアポート、アスポート、テレポート、テレポーテーションです」


「多いね」


「巫女長になるために子供の頃から一生懸命勉強して来ましたから」


思わず僕はエルを見てしまうとエルが怒る。


「今、何でこっちを見ましたか? カナタ?」


「いや、何でもないよ」


「そんなことをありません! 絶対今、彼女と私を比べました! お仕置きです! へぶ!?」


エルが飛び掛かって来ると僕に貼られた結界にぶつかる。


「旦那様に攻撃しては行けませんよ」


「これは攻撃ではありません! カナタが言う所の躾というものです!」


二人が睨み合っていると賢吾が感心した様子で言う。


「今のは手で印を結んだのか?」


「はい。略式詠唱です。予め決めた印を結ぶことでスキルや魔法を発動させます。これだとわざわざ口でスキル名などは不要でより高速に魔法やスキルを使えます」


「それは便利だな……俺も考えさせられるスキルだ」


賢吾は忍者に転職するつもりなのだろうか?いや、転職先に忍者があるのか知らないけどね。ここでミイネの魔法の説明を受ける。


フレイムボールは火球を投げつける魔法。火属性の基本的な魔法で威力が一番弱いらしい。フレイムアローは火の矢を相手に放つ魔法。フレイムボールより速く威力が高い。


ここからが本番だ。フレイムシャワーは火の雨を降らせる魔法。広範囲魔法だが、威力がフレイムボール並みらしい。次はフレイムピラー。地面から火柱を発生させる魔法で魔方陣を設置する罠タイプの魔法だ。火魔法最後はヒートレイ。熱線を放つ魔法で大木を貫通する威力があるそうだ。完全にビームなので、速さはトップクラスだね。


聖魔法に移る。ヒールは回復魔法。ただし回復量は僕の治療スキル並みだ。エリアヒールはヒールを広範囲にかける魔法。回復させる数が多くなるほど、魔力の節約になるらしい。


ヒーリングは生命力100回復する魔法。エクソシズムは幽霊を浄化する魔法。アンデッドモンスター全てに有効な魔法で悪魔や普通の生物には効果が無い魔法らしい。


次は闇魔法だ。ダークボールはフレイムボールの闇属性版だ。シャドースワンプは影の沼を作り出して、相手を沈めて動きを封じてしまう魔法。影縛りより拘束力が強いらしい。ライフドレインとマジックドレインはホゥも使えるね。そんなホゥをガロロが茶化す。


「お前、負けてるじゃねーか」


「わたしは戦闘特化じゃないからこれでいいんですー! いつも家の中で寝ているガロロ君にはわたしの苦労とか分からないと思うけどねー」


「いつもじゃねーよ! それにお前もいつも昼寝しているんだろうが!」


「わたしは夜ずーっと夜の間、森中を監視しているんですー! 昼寝というか睡眠ぐらいゆっくり取らせる配慮とかガロロ君にはないのかなー。もっとカナタ君を見習うといいよー」


ガロロにはあまり僕を見習って欲しくない。仕事場でカードゲームをしているエルや子供達。昼寝しているハクアやホゥ。どう考えても仕事場の光景じゃない。この事にチョコネが爆発したほどだ。この時に容認している僕が怒られることになったんだよね。


「大変そうですね」


「確かに大変だけど、楽しくやってるよ」


「それは何となくわかります。皆さん、楽しそうですから」


ミイネがそう言ってくれて、良かったと思う。僕達は戦火の真っ只中にいる。そんな状況でいつも殺気立っていると心が可笑しくなってしまう。せめて平和なひと時ぐらいは笑顔でいて欲しいと思わずにはいられない。


魔法の最後は大注目の転移魔法。まずアポートは目に見える範囲の物を手元に移動させる魔法。これに対してアスポートは物を遠くの場所へ送る魔法らしい。これは聞いた賢吾が耳打ちしてくる。


「直哉には教えられない魔法だな。あいつなら絶対にパンツを狙うぞ」


「目に見える範囲だからそういう事も出来るのかな? まぁ、もしやったとしても、美友ちゃんに捕まる未来しか考えられないけど」


「だな……だが、俺達に飛び火する可能性が無い訳じゃない。保険を賭けておくべきだと思うぞ」


「そうだね。それじゃあ、教えないってことで」


僕達はなおやんに謝りながら秘匿することにした。


次がテレポートとテレポーテーション。テレポートが短距離の瞬快移動魔法でテレポーテーションが長距離用だ。ここで僕はミイネに質問する。


「エルフの知り合いが沢山のテレポーテーションを使っていたと思うんだけど、ミイネは出来るの?」


「わたしくに出来るのは転移魔方陣の中にいる人を転移させることだけです。その人は恐らく多重詠唱を使えるんでしょう。魔法をいくつも同時に使えるスキルです」


「そっか。ん?」


「あの……わたしく役立たずでしょうか?」


余計な事を聞いて地雷を踏んでしまったようだ。


「そんなことは全然ないよ。寧ろ凄く強いし、君の事を役立たずなんて言ったら、僕はどうなる事やら」


「それこそ神様を召喚する人間と比べるなんてわたしくの方が恐れ多い事です。それに君ではなく、ミイネと呼んでください」


僕が下がるとミイネはすぐさま距離を詰めて来た。


「ミイネです」


「ミ、ミイネ」


「はい!」


満面の笑顔を見せる。このやり取りを見ていた賢吾が笑う。


「くく……たじたじだな。星空」


「何が可笑しいのかな? 賢吾」


「可笑しいさ。子供の頃以来だからな。お前がそうなるのは……これは葵達にいい土産話が出来た」


話す気満々だ。こうなった賢吾は止めらない。弱みを見せた僕が悪い。するとミイネが予想外の援護をしてくれた。


「旦那様を困らせたら、いけませんよ。もし困らせたら、祟りますから覚悟してください」


「……参考までに聞くがどんな祟りが起きるんだ?」


「さぁ? どんなのでしょう? ただ狐の祟りは怖いんですよ」


賢吾が僕にアイコンタクトを送って来る。


『どうにかしろ』


『無理』


賢吾まで圧倒するミイネに僕は戦慄を覚えた。それから妖術の話があり、変化に先程話した祟り、狐火があるそうだ。狐火について聞くと狐の姿をした炎が相手を追尾するスキルらしい。


占術は天気予報や未来予知が出来るそうだ。ただし未来予知は確実では無い。というのも未来を予知する人が望んだ未来じゃなかった場合、当然その未来を変えようと動く。このため、未来は様々な要因で常日頃変化しているそうだ。しかしどんなものか気になるので、未来を予知して貰う。


「では、まず旦那様からしますね。むんむんむん」


ミイネが念じると持っている紙に文字が浮かぶ。そして未来予知の結果を見たミイネが凄味がある笑顔で僕を見て来た。


「……子供はいないってどういうことですか?」


「えぇ!? 知らないよ!?」


「未来予知が使えないんだから当然だろうな」


これでミイネの事は大体の事は分かった。そして今後の話をする。結局僕達は協力関係を結ぶことになった。具体的には狐の亜人達には服などの生産作業をしてもらい、その代わりに僕達はモンスターのお肉と水を提供することになった。


僕達としてはこの結界内の狐の亜人達の村は安全な生産拠点となり、狐の亜人達にとっては自分達の安全性が増えた形だ。最もここと僕達の拠点とでは距離があるから色々問題があったのだが、そこはミイネの転移魔法で解決することになった。


因みに僕達の住処にミイネの護衛役も派遣されることも決まった。僕達としても戦力が上がることは嬉しいし、彼らにとってもプラスは大きいそうだ。具体的には消毒液の作製法が注目されている。あれだけ魔毒で痛い目に会ったのだ。ここに注目するのは当然と言えた。


後はやはりカードゲーム。エル達が滞在中にも遊んでいたことで注目を浴びた。帰ったら、彼らのデッキも考えないとね。色々決まった後に僕達は自分達の縄張りに帰ることにした。


「何でミフネちゃんまで来るんですか!」


「私があなたについて行くのは当然じゃないですか……一人で着替えも寝る事も出来ないし、夜のお手洗」


「わわ!? それ以上は言っちゃダメですー!」


ミイネのイメージが音を立てて崩れるのだった。

あまり使わない座礼について説明します。


座礼とは言葉の通り座ったままお礼をすることを言います。よく似ているのが土下座ですがこちらは主に謝罪や請願する時に使われる言葉です。


今回感謝の時に使うお礼を土下座と書くのは変だなと思って調べて、初めて座礼という言葉を知りました。座礼にも色々な種類があるので、興味がある方は調べてみてください。


また斎皇女いつきのみこについても軽く説明させて貰います。

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ゲーム世界で冒険する小説『Elysion Online ~ドラゴニュートと召喚師~』を
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