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#12 田舎貴族とエルの問題行動

僕が待ちぼうけしていると先程の少女がやって来た。


「すみません。待たせてしまって……どうぞ。中へ入ってください」


「はぁ、どうも」


僕が入ろうとするとガードマンに止められる。


「この騎士様は私の客人です。通して頂けますか?」


「「は、はい!」」


この少女、只者じゃないぞ。結構上の地位の人かも知れない。


「この部屋で少々お待ちください」


通されたのは貴族風の豪華な部屋だ。やばい……物凄い少女と関わってしまった感じだ。僕がそわそわしていると少女はちょび髭が似合っているジェントルマンを連れて、やって来た。


「お待たせしました。あ、この人は私の父です」


「娘の不治の病を治してくれたそうだね。君には感謝してもしきれない」


え?あれが不治の病のだったの?薬局で1000円ぐらいで買った風邪薬だったんだけど、僕らがいた世界の薬はそんなに凄いものなのだろうか?うーん……分からないや。


「えーっと……はじめまして。カナタと申します」


「そういえば自己紹介がまだでしたね! 私はリース・ブルンハイムと申します」


「私はアークス・ブルンハイム。ここから少し離れた村の領主をしている。田舎の貴族だが娘を助けてくれたお礼を何かされて欲しい」


「そう言われも色々問題を抱え込んでまして」


「うむ。その問題とやらを聞かせてくれないかな? 娘の命の恩人だ。他言はしないよ」


優しそうな人だし、リースは異世界の事を知っていた。これならある程度は話しても大丈夫だと僕は判断し、エルのことだけ伏せて相談することにした。するとこれを聞いたアークスさんは王国の対応に激怒する。


「勇者召喚をしておいて、いらない者は切り捨ているのが国のやることか!」


「お父様……」


「……すまない。少し感情的になってしまった」


「いいえ。怒って下さってありがとうございます。ちょっと人間不信になっていたので、助かりました」


僕の正直な気持ちを伝えるとアークスさんは苦笑する。


「それはそうなっても仕方が無いだろうね。寧ろ国の監視に引っかからず、よくここまで来たものだ」


やっぱり監視されていたのか。僕は何も感じなかったけど、馬車で運ばれるだけで終わるとは思ってなかった。


「取り敢えず君の事情は分かった。無職だというなら私の屋敷の執事として君を雇おう」


「それは名案です! お父様! あの! カナタ様! お時間がある時で構いませんからカナタ様の世界の話を聞かせて頂けませんか?」


「えーっと……まだ受けるとは言ってないんですけど……」


「あ……し、失礼……しました」


リースさんが顔を赤くして声が小さくなった。そんなリースさんの姿を見てアークスさんは笑う。


「お父様!」


「いや。すまない。リースのそんな様子を見るのは久しぶりだからね。つい嬉しくなってしまった」


「もう……知りません」


「はは。それでカナタ君はどうするつもりかな? 執事になってくれるのなら家ぐらいは用意してあげれるよ? 私達の屋敷がある村の空き家になるがね」


執事なんて当然したことないけど、無収入で家無し状態からお金を稼げて家も用意してくれると言うのだからかなり魅力的だ。ただ僕にはエルがいる。二人の様子から優しい人達であることは分かった。ここは思いっ切って話してみよう。


「お受けしたいのですが、問題が二つあります」


「何かな?」


「一つは僕が国外追放されていることです」


話を聞く限りでは二人の村はこの国内にある。国外追放された僕は村にはいられないだろう。


「なるほど。確かにそうだね。しかし永久に国外追放するとは言われていないんだろ?」


「……言われてませんね」


思い出しても永久追放じゃなかった。案外あの王女様がわざと逃げ道を作ってくれたのかも知れない。


「ならば私達の村の傍にある森に一度入れば問題はない。あそこは亜人が住んでいる森でこの国の国外になるからね」


「そうなんですね」


田舎貴族とは言っていたけど、国の端っこにある村の貴族だったのか。それにまさかここで亜人の話が出るとは思ってなかった。


「これで問題の一つは解決だ。もう一つは何かな?」


「先ほどの話でわざと触れなかったのですが、実は竜人族という亜人と出会っていまして」


「「竜人族!?」」


これには二人が驚いた。


「ちょっと待ってくれないか? 竜人族がいるのはこの大陸から離れた島のはずだが」


エルの故郷がその森だと希望を持ったけど、まさかの大陸外であることが判明した。エルを家に帰すのは随分先になりそうだ。


「修行の為にこの大陸に来たみたいです」


嘘はたぶん言ってない。


「その竜人族は一人なのかい?」


「そうみたいですね」


「そんなことがあるんですね」


「狩りの訓練はさせていることは予想されていたが、まさか自分達の住処の外で一人行動されるとは思ってなかった。流石最強の亜人と言われるだけはあるか」


すみません!実際はぐーたら生活のし過ぎで親に追い出された子です!ここで僕は二人に聞いてみる。


「お二人はそこまで亜人に恐怖とか持っていないんですね。正直この話をすれば話は無かったことにされると思ってました」


「そう思うのは当然だろうね。亜人は世間一般的にはモンスターとされている。ただ私は娘から散々亜人について聞かされていてね」


「私は子供の頃に森で迷子になったことがありまして……そこで亜人の女の子に助けられたことがあるんですよ」


なるほど。道理で冷静なわけだ。それにしても話が上手く行き過ぎている気がする。僕がそう感じていると町中に警戒音が鳴り響く。


「竜人族だ! 竜人族が出たぞー!」


「武器を取れ! 現れたのはマーケットのほうだ!」


僕は机に頭をぶつける。町に入ったらダメだってあれだけ言ったのに!何やっているの!



エルはその頃お肉を(くわ)えて逃げ回っていた。


「人間怖いです~!」


エルがしたのは食い逃げだった。

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