閑話 ヒロインになりたくて
目が覚めると私は私ではなくなっていた。
鏡に映る私は前まで憎くて憎くて仕方のなかった相手。羨ましかった相手。どうして。
あれは何周目だったのか。私は好きなあの人に振り向いてもらいたくて、頑張って、頑張って__しかし私の頑張りだなんて所詮知れている。
運命には抗うことができない。決まったシナリオをただただ辿るだけ。私の配役は決まっている。
いい加減この役をやっていると苦しくて、辛くて、こんなのなりたかった自分ではないのに。
そしてまた新しい物語が始まりだそうとした日、私は月をみながらぼんやりと願った。
『あの子になりたい__』
叶うはずもないと思い、いつもの様に家を抜け出した。
■ ■ ■
春、学園に入学した。本番は来年だが、今も胸は踊るほど期待に満ち溢れている。私がなりたかった人。今回なら上手くいくはず。だっていつもそれを見てきたから。
しかし私の期待は大きく外れてしまった。私が中心のはずなのに。私のためのものなのに。なんで。
私の目に映るのは見慣れた姿の女性。彼女は今までと違っていた。憎い。憎い。憎い。嗚呼、なぜ私はいつも誰かを憎むのか。心の底では誰も憎まずに、幸せに、愛されたいと願うのに。
癖はここまで抜けないものなのか。いや、もう私の一部として設定されているのか。
あの人も、あの人も、みんな私のことなんて気にもかけてない。今回ならって期待してもダメみたい。
なんで、なんで、なんで__。私が何をしたっていうの。
なんで私の、あの子の周りにはあの人がいる__?こんなの許されるはずない。今まで許されなかったのだから。
……もういいや。どうせ神様は私をとっくに見捨てている。見捨てられているなら尚更__何をしたっていいや。
この物語は私が終わらせる。私のための物語なのだから。




