5 後ろの席
翌朝。私はベルと一緒に登校した。ベルとはクラスが違うので学校に着くとそれぞれの教室へ向かった。
登校中も情報通なベルに私はゲームの主要人物たちのことについて聞いた。彼らは主要人物だけあって学園でも目立つ。だから私が彼らのことについて質問するのは何の違和感もない。良いところはここだけだ。
登校中に手に入れれた情報は同級生で私とクラスが同じのサイラクス・アッサムハルト。彼の家は他のキャラに比べて地位は高くないが口がよく回り顔が良いため学園のカーストも高いだろうというベルの予想。とてもフレンドリーらしく、アッサムハルトに捕まると人の輪の中に入ってしまうので私はあまり関わらない方が良いと助言もしてくれた。
本当にベルは私の味方をしてくれて心強い。男だったら惚れてるわ。
■ ■ ■
教室に入ると私は絶句した。
私の席は一番端の後ろから2番目で前にはジェニーがいるというベストポジションだった。だがしかし。なぜこの男が私の後ろにいる、サイラクス・アッサムハルト。
私の後ろの子はローズンの取り巻きだっただろうが。お前は一番前のローズンの横だろうが。阿呆か。
「リリィちゃん!おはよう」
「ん、リリィちゃーん!おはよっ」
「ジェニーおはよう。……あなたは誰ですの?知らない殿方に愛称で呼ばれる筋合いはないですわ」
「あぁ、自己紹介がまだだったね!俺はサイラクス・アッサムハルト。気軽にアッサムって呼んでね。君は、グライアス・リリアーナでしょ?リリィちゃんって呼ぶから~」
「どうして私の名前をっ。というか自己中心的なお人ですわね……。あなたはここの席ではなかったはずよ?」
「あなたじゃなくてアッサムね。席に関してはちゃんと代わってもらったよ。ローズちゃんの隣は嬉しかったけど一番後ろの席の方が魅力的だしね~。それにここにいた子もローズちゃんの隣の方がいいでしょー?ウィンウィンのカンケイ?ってやつ」
先ほどベルの忠告を受けたばかりなのにもう手遅れだ。がっつり絡まれた。もしかしたら友達認定されてるかも。アッサムハルトはローズンと隣の席で接点が生まれ、仲良くなって……って始まるのに。こいつ自爆してるじゃん。他のキャラに負けるぞ、アッサムハルト。
それにしてもジェニーが私たちのやり取りを見てずっとにこにこと見守っている。なんか恥ずかしくなってきた。私はアッサムハルトではなくジェニーと話したいのに。
「席の件はわかりました。でもあまり私に話しかけてこないでねっ。あなたといると目立つから嫌なの。ただ私は教室の片隅で生きていたいだけだから」
「なにそれー!というかアッサムだって。リリィちゃんがその気なら俺、頑張ってリリィちゃんに俺の名前を呼ばせてクラスの人気者にしてみせちゃうから!」
なんでやねん。放っておいてくれよ。へんなスイッチ入ってるじゃん。
こうなったらもう……シカトするしかない。彼をいないものとして考えて生活しよう。うん。
「ジェニー、私の後ろには誰もいないわ。私が一番後ろだもの。いない、いない」
「あはは……。リリィちゃん後ろのアッサムくんがすごくこっちに手を振ってくるよ?」
「私にはなにも見えないわ。さぁ、もう授業が始まるし、授業の用意をしましょう?」
後ろからめっちゃ存在をアピールする圧が来るけど知ったことか。今日から私の脳内からアッサムハルトという人間はいないことになった。「リリィちゃーん!リリィちゃーん!?」っていう声ももちろん私には聞こえない。
アッサムハルトのせいで私たちの席の方に少し視線が集まった。その中にローズンの視線も含まれていた。彼女はきょとんとした感じにこっちを見たが、しばらくしてまた取り巻きと言える友人たちと話始めた。
ローズンが一瞬周りが凍るような冷たい視線を向けたのは気のせいだと思う。
1限目から昼休みになる頃には私はアッサムハルトを無視するのに疲れきっていた。でも、これからジェニーと楽しい昼食と思うと疲れが吹き飛ぶ。
よし、昼休みは静かに2人で過ごそう。




