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壊れた人形達と、VRMMO最深部を目指すお話  作者: 愛良夜


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はじまり

VRMMO《Eidolon Archive Online》。


正式サービス開始から三日目。世界的にヒットしているフルダイブ型MMOだ。自由度の高さとAI生成NPCの自然さが売りで、プレイヤーごとに“異なる世界体験”ができることで話題になっている。そんな俺も元開発者兼テスターとしてこのゲームをやらない訳が無く、VRヘッドセットを早速装備して自分のアバターや初期登録を進めていた。


「登録UIはきちんと想定通り…プレイヤーの骨格と肉付きは本人通りでいいか…名前は…ハンスで…職業は…」


【職業を選んで下さい】


「職業か…適当に以前と同じ…」


【人形遣いを選択しました】


「ん?いやそれは押してないが…」


名前の入力、身長体重などなど基本情報の入力は問題無く行えたのに、なぜか職業選択時に戦士を選んだはずだが、最終的には自分のステータス画面に人形遣いと書かれていた。


「バグか?…後で報告しておこう」


とりあえず確定してしまったのでそのまま次の設定をしていく事にした。


「最初の持ち物…ここは無難に回復薬を…」


【人形図鑑を入手しました】


「……?」


これもバグとして記録しておくハンス。


【設定が完了しました…】


「ゲームスタート」


【ゲームにログインします…お帰りなさい。マスター】


システム音声に何か違和感を覚えたが、それよりも先に意識がゲームの中へ沈んでいってしまった。



次に目を覚ました時、俺は見たことの無いボロ家の中にいた。

このゲームの初期スポーン地点は職業毎に違うので、人形遣いだと確か…


人形の家(ドールハウス)か」


通称、人形収容所とも言われており、プレイヤーが手に入れた人形はここに収容されている。そしてその収容所の持ち主であるプレイヤーは自由に出入りする事が出来る。


「とりあえず出るか」


頭の中で外へ出ると念じると、少しの浮遊感と共に、一瞬で外へ出る事ができた。


どうやら外はのどかな草原のようで、足元には小さく綺麗な川と、おもちゃのようなサイズの木の家が落ちていた。


「これが人形の家だな」


自分の親指を少し噛み、数滴の血を家に垂らす。すると人形の家は少しカタカタ動き、ハンスの身体の中に抵抗無く吸い込まれた。


「これで俺専用になったな。後は…」


ハンスは目を閉じて人形の家へ入るイメージをする。するとハンスの身体は糸が切れたようにその場にへたり込み、意識が再び先程の家に戻った。


人形の家の内装は至ってシンプルで、ドールクローゼットとプレイヤーが寝泊まりする用の冷蔵庫やキッチン、ベッドやソファんど生活には十分すぎる設備が設置してある。食料や物品は一度購入してしまえば、念じるだけで家の中に送る事が出来るので、非常に便利だ。


「鏡は…ここか」


等身大の鏡があったので自分の姿を確認する。前線を張る戦闘職ではないので、一般的な戦闘用の布装備しか身につけていない。まあ十分だろう。


「それで、俺の最初の人形は…?」


設定上、人形使いはおおよそ4体の人形を使役する事ができる。その数も人によっては多かったり少なかったりするが、使役できる数は人形の家にある扉の開いたドールクローゼットの数で分かるが…


「俺は7体か…ん?閉まっている?」


閉まっているという事は既にドールクローゼットにドールがいるという事。まだドールを【作成】したり【捕獲】していないはずだが…とりあえず1番近くのドールクローゼットを開けようとしたが、扉はびくりともしなかった。他のクローゼットも同様に開かず…少し困っているとどこからとも無く一冊の本が飛んできた。


「人形図鑑」


人形図鑑を手に取ると、勝手に本が開き、パラパラとページが捲られた。その様子を眺めていると、あるページを図鑑は提示してきた。


「【凍え死んだエマ】」


ハンスがそう言うと、かちゃりと目の前のドールクローゼットから音がした。おそらく鍵が空いたのだろう。ハンスは一旦図鑑を閉じ、音のしたクローゼットを開ける。


中には粗末なエプロンをきた、裸足で金髪の西洋人形が氷漬けになっていた。顔はどことなく幸せだが、人形に触れてみると恐ろしく冷たい。片脚が凍傷によるせいか紫色に変色しており、見るも辛い姿だ。


どうしたものか迷っていると、再び図鑑がバタバタと震え出し、パラパラとページを捲り出した。そして再び先程のページで止まったと思うと、下の方に文字が出現した。


「【彼女にぬくもりを】」


どうやらそれがドールの目を覚まさせる方法なのかも知れない。人形は俺が設計した要素のひとつであるが、こんなふうにボロボロにした記憶はない。それはそれとして少し可哀想と言う気持ちが湧くので、とりあえず彼女をクローゼットから取り出す事にした。



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