2-1話:魔改造運動会
「では最後に、生徒会役員の紅白戦における係分けについてよ。」
5月の終わりが近づき初めた頃。俺ら生徒会は6月末に開催される旧都魔術科高校との合同運動会のようなものである紅白戦に向けて調整をしていた。運動会と言っても競技内容は魔術による実戦を想像させるものが多く、日本の運動会のような組体操やリレーといった魔術を使わない競技は残念ながら実施しない。運動会に多少の思い出がある俺としては少々残念だ。
一息付き、生徒会室を見渡す。入り口であるドアを背に向けると正面には窓があり、長机が窓に向けて縦に置かれている。また、両わきにはソファがあり会議がやりやすい構成となっている。片方の壁にはプロジェクターを移せるよう何も掛けられておらず、もう片方には賞状や絵が飾られていた。
俺らの座っている配置についてはドアに1番近い両わきの席に俺とジェへラ。そして俺の隣にはアリサ先輩が座り、その反対側には金髪の美形な子役のような男の先輩であるルイス・アイニール先輩が座っている。
アイニール先輩はドワーフ族の2年生で特進クラスとなっているS組。ファンタジーゲームに出てくるむさ苦しいドワーフとは違い、アイニール先輩の肌は白く毛が薄い。ドワーフだと言われなければただの美少年だ。耳が尖っていないエルフと言えよう。
そのアイニール先輩の隣に座るのはエルフ族で3年A組のカイル・アバク先輩。身長が2メートル以上あり、細身ながら背丈が大きい。目にクマがあり、前髪が長くとても健康そうには見えない。
そして、モニターを移す方の壁に背を向けながら二条先輩が立ち、口を開いた。
「まずアバクくんについては技術部門の総括とチームリーダーをお願いね。チームリーダーとしての指示出しがメインだけど、余裕がなければ技術バックアップに回っていいわ。指揮統制は他の人間でも出来るもの。それで、どうかしら?」
「多方問題ない、引き受けよう。ただひとつチームリーダーとして言われてもらうなら、物理部以外の技術部門は弱い。講習会を開く必要があるだろうな。任された仕事には全力で挑みたい所だ。そこ、頼めるか?」
「技術部門に充てがわれた生徒の紅白戦に向けた授業の時間をそっちに使うよう調整すれば良いのよね?了解よ。」
二条先輩が革のカバーを付けた手帳にメモを取る。メモは取らない派で直ぐに忘れる派で誰かに聞く派の俺にはない行動だ。
俺等の通うこの学校は生徒の考えを重んじる校風により授業内容の臨機応変な変更が可能であり、生徒会によって授業カリキュラムを変更して貰う事が出来る。この学校では教師は生徒を育てるための一パーツでしか無い。教師から不満が出そうではある話だが、帝都高の卒業生を教師として積極的に取ることで理解を深めているそうだ。
「案内係とかの生徒会と風紀委員に任されている仕事の統制はアリサとアイニールくんにお願いするわ。」
「承知しました!頑張ります!」
「了解、アタシに任せて。」
アイニール先輩はニコニコしながら頷き、アリサ先輩は真面目な顔で左手で胸を叩く。一見真面目で頼もしく見えるアリサ先輩だが、二条先輩の死角で俺の太ももを右手で撫でている。完全にキャバ嬢の仕草だ。勇者時代の経験により若干の女性不信を抱えている俺ではあるが、ちゃんと性欲はある。理性が欲望に負けそうだ。
「村田くんとユグさんは先輩ふたりの指揮下に入って。基本的に行動する時は指示を仰ぐこと。」
「基本的にはとそう付けるからには、例外もあると認識しても良いのですかな?」
「えぇ、口より身体を先に動かさなくてはいけない場面はあるもの。」
ルールの穴を付くのが大好きなジェヘラが何か良くないことを思いついたかのような含みのある笑みを浮かべて二条先輩に尋ねる。それに対し二条先輩は肯定。生徒会長をしている二条先輩と魔族を束ねていた女王だった過去を持つジェヘラ。ふたりは意外と気が合うのかもしれない。
アリサ先輩が俺の太ももの内側を触る。会議に集中できないから辞めてほしい。
「俺からも質問と言うかお願いなのですが、俺も技術部門に携われませんか?生徒会としてのサポートみたいなポジションで。」
「別に携われるはするのだけど、貴方戦闘畑の人間ではないのかしら?魔道具の調整が出来るのは聞いていなかったのだけど。村田くんはどのくらい出来るの?」
「それなりに、ですね。」
「では俺が実力を試させて貰おう。二条、パソコン借りるぞ。」
アバク先輩が二条先輩が使っていたパソコンを動かし、プロジェクターに反映させる。
「これは3年前に本校で起きた試験での魔術の暴発事故の資料だ。事故内容は魔力の過剰使用。ファイアボールを本人の内蔵魔力を超える魔力で使用するよう魔道具に組まれていた。原因は何だ?」
今の時代の魔道具はコンピューターが制御している。その為、魔導具の設定をパソコンでいじる事が可能だ。例えば無線機の魔導具をパソコンに繋いで弄り、新たに使える無線機の周波数を増やしたりが出来る。また、戦闘系の魔道具のコンピューターを操作して魔力の出力を調整することが出来る。例えばファイアーボールの通常使用魔力を1とした時、コンピューターで使用魔力を3にして威力をあげることができるのだ。
ただ、魔道具を使用しない魔術だと自由自在に使用魔力を変更することが出来る。やはり魔道具とは魔術を使用する上の枷と言えるだろう。
「魔力の要求コマンドを通常より高く設定させ、外部魔力との中継器部分を荒くした。でしょうか?」
「正解だ。では、何故そうなっていた?」
「……使用者自身がいじった。ミスではなく、故意による事故。」
「その通り、合格だ。魔導具の調整技術者は使用者を理解し分かり合うのが大切とされているが、それ以上に信用してはならない。自らの実力の無さを魔導具のせいにし、付け刃の知識で弄ろうとする。先程の問題の根本的要因は調整技術者が調整コマンドのロックを外していた、またはパスワードを使用者に教えていた所にある。」
淡々と、尚且つ憎悪のような感情を含ませつつプロジェクターを睨み説明する。きっと過去にあった身近な事例なのだろう。もしかするとアバク先輩本人の経験なのかもしれない。
「村田の調整技術は知識だけしか今はわからんが、紅白戦でも使えると言っていいだろう。技術部門の参加を推薦する。」
「今後を見据えて見学兼サポートと言う形で参加させましょう。もちろん、係仕事の合間を縫ってでの参加になるでしょうけど。村田くん、それで良いかしら?」
「はい、ありがとうございます。」
「他に質問は……、ないわね。では、これにて紅白戦の会議を終了します。放課後なのに付き合ってくれてありがとう。」
プロジェクターの電源を切り、皆が机に広げた資料を片付け始める。ジェヘラは食べていたポッキーをカバンの中に片付けあくびをしたのに伸びをする。メモをするふりをしてぼーっとしている俺と比べて器が違いすぎる。一ミリも垢を煎じて飲みたくはない。
「改めて村田くんも、ジェヘラさんも、よろしくね?」
アイニール先輩がニコニコしながらこちらを向いて語りかけてくる。別にショタコンでもホモでも同性愛者でもないが、かわいい。
「よろしく頼みますぞ、アイニール先輩。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
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「うん!よろしく!それじゃ、またね。」
アイニール先輩が手を振り、それについて行くかのようにアバク先輩も部屋を去る。そして俺も机に出したノートを片付けて帰ろうとした、その時であった。
俺のスマホから着信音が鳴る。
「こちらこそ川岡消防局の清水と言う者なのですが、村田優希様の携帯で間違いないでしょうか?」
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