29.怪しいNPO
雫と華音はまず元リビングらしき場所を探索した。
そこには質素な机と椅子、そして何もない空間だけがあって、少し異様に感じた。
「んーと…どこを探せば良いのかな」
華音がそう言うので、私は答えた。
「違法なものが出てこなければそれで良いから、何となくで探せば良いよ」
私はそう言い、それとなく周りを見回し、その後、気になるところを片っ端から確認した。
問題なし。
華音も同じようで、口をへの字に曲げ、首を横に振った。
次の部屋に移る。
そこはキッチンのようだった。
調理道具や調味料など、様々なものがあって、生活感がある。
華音はマナーお構いなしに冷蔵庫を開け、中身を見る。
そこにはいくらかの野菜、肉と、チーズや牛乳なんかの乳製品が入っていた。
…普通だ。
「ね、貰っちゃっても良いかな?」
華音の手にはトマトが握られていた。
「ダメだよ。お腹すいたなら後でご飯食べようか」
「んーん。お腹は空いてない」
そう言って華音はトマトを元の場所に戻した。
…まぁ、問題ないかな。
一方その頃、北原と茨木は2階を探していた。
うす暗い中を、スマホの光でひたすら動き回る。
北原はSNSを見ていた。
「ね、このアクセこんなに可愛いのに、安いんだよね」
北原は茨木にスマホの画面を見せた。
そこには真鍮製のネックレスがあった。
「まぁなんだ、上品ってやつだな。で、そんなことは今は忘れろ。後で天崎のやつに頼んどいてやるから」
天崎というのは北原と茨木の保護者役のような男だ。
左遷された自衛官で、淀川とは仕事仲間にあたる。
「やった。じゃあちゃんと頑張る」
北原はスマホを見るのをやめ、暗い部屋の中を捜査し始めた。
ジャーッ
北原はパパっとカーテンを開け、部屋全体を明るくした。
そこにはたくさんの工具類が置いてあった。
ドライバー、ラジオペンチ、ニッパ等。
加えて何故かL字型金具や、インスタントコンクリートの袋なんかもあった。
ただ、違法性のある物は何もない。
「…戻るか」
茨木はそう言う。
北原は怪訝な顔をし、数枚パシャパシャと工作室を撮影した後、茨木に続いた。
「何かあったか?」
「いや、念の為よ」
茨木は北原の勘を信用していた。
彼女はスマホ依存さえ無ければかなり優秀なのだ。
ただ、その依存が問題過ぎる。
何せ『スマホを取り上げられたから』と家族を惨殺してしまって、旅団に送られてきたのだ。
見つかった当時、血まみれの部屋で真ん中に座り込んでスマホを見ていた。
…そういう女なのだ。
再びスマホを見始めた北原を見つつ、茨木はため息をついた。




