1.プロローグ
東京某所。
男と女がテーブルを挟み、椅子にもたれかかっていた。
その表情はなんとも暇そうだ。
男と女はそれぞれ首に黒いチョーカーをしていた。
…何も知らない人が見れば、もしかすると恋人同士か何かと見間違えるかもしれない。
「ね、聞いた?最近スマホとかご飯とか、良い感じのが支給され始めた理由」
1人の女が頬杖を着き、スマホを見ながら、隣の男に話しかけた。
「あ〜…あれか。確か北欧の刑務所の真似事だろ?囚人を甘やかせば再犯率は下がるって」
男はバニラアイスを食べながらそう答えた。
「なんでうちで真似事してんだろ?」
女は首を傾げた。
「そんなことも分からないのか?法務省サマは自分の管轄内でそういう実験をやりたくないんだろ。そういうのを刑務所でやって、逆に再犯率が増えたら、提案者は問答無用でクビだろうしな?それに、うちには資金が沢山ある。何せ旅団規模の維持費を丸々お国からいただいてるからな。だから法務省側はノーリスクで試せる。俺たちの再犯率なんてアイツらにとってはただの試金石だしな」
男は両手を肩の高さに持ち上げ、『どうしようもない』というジェスチャーをする。
女は気にせず、口を開いた。
「ふーん。よく分かんないけど、タピオカ付きのスマホが支給されるとか太っ腹だよね。何気にシャバより良いかも」
男はため息をついて言った。
「まあな。刑務官も、自衛官も、警察官も、みんな高い金を貰ってる。いわく『本来なら数十倍の人数で当たらなければならない問題に、少数で当たってくれているあなた達には、我々も相応に報いなければならない』らしい。おかげで、俺ら全員得してるわけだ」
「本当は政治家達がここの解体を面倒くさがって、そのまま予算も放置されてるってだけだよね。なんか…あんまり見ないのに契約してるサブスクみたい」
女はそう言った。
「言い得て妙だな」
男は苦笑した。
それから数秒と経たず、スーツ姿の男が1人、彼らに寄ってきた。
「おい、北原、茨木、もうそろそろ休憩は終わりだ」
呼ばれた2人は仕方ないと言った表情で席を立った。
そこはカフェのテラス席だった。
スーツの男は2人を連れ、大通りに出た。




