墓~ベックリン「死の島」より
Isle of the Dead 1880 Arnold Böcklin
死の島 アルノルト・ベックリン
(著作権フリーの画像を掲載しています)
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停止して 初めて
動いていたのだと気付く
呼吸は音を生み
心臓は身じろぎを送り込み
目は わずかに何かを訴えて
動いていた
ぴたりと
何もかもがストップして
もう絶対に
永遠に
ぴくりとも動かないのが
死だ
どこにもいない……
凪いだ海原に浮かぶのは
ひとひらの希望も挟めない
墓という名の 絶対的な結論
でも
この島に 私は幾度も訪れるだろう
心の海原に潜んだ
思い出だけが住む 時の止まった島に
さあ
自分は どう生きようか
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君たちはどう生きるか
(宮﨑 駿 原作・脚本・監督/スタジオジブリ作品 2023公開)
注:スタジオジブリHPの作品静止画を掲載しています
「画像は常識の範囲でご自由にお使いください」と掲載されているものです
https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/
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映画館に観に行った娘が、首を捻りながら帰って来た作品。
「なんか……さっぱり分からなかった」
そして、初の地上波放送となった際に、私にオーダーが入りました。
「みて。それで、どう解釈したか私に説明して」
で、見た後、べらべらと喋ったものを文章にしてみました。
ちなみに、作品内で、この「死の島」をモチーフにしたと思わせる光景が出て来るんです。
墓場のとこ。似てますよね。
まず、そもそも「あの世界」は、眞人の精神世界である。
その解釈で見ると、一気に単純になります。
死んだ母親への思慕。
義理の母に反感を抱きつつも、匂い立つ「女性」を感じて、内心では惹かれている。
自然と、心の中で偶像を作り上げて。
でも、リアルに触ってしまえば、ずぶずぶに崩れてしまう……。
そして、出産という、男にとっては神秘の領域。
そこに、若さゆえの無遠慮さで踏み込んでしまう。
折しも、日本は戦争に雪崩れ込んでいく時代。
資源の乏しい国内。人々は生活に行き詰まり、ぎゅうぎゅう詰めの土地で、食べる物にすら困窮していく。
その世情が、この不思議な世界の有り様に投影されていると思う。
外に出れば、自分を殺そうと襲ってくるインコ(敵)が大勢。
一緒に戦ってくれる仲間(友達=アオサギ)を得るのが大事なんだ。
そして、少年は「生きる術」を教わらなければならない。
っていうことを、この映画は伝えたいんじゃないのかな。
義理の母、夏子は、眞人にとっての「女性」そのもの。
ヒミ(少女だけど、実は眞人の母親)は、この世界にあって強大な力を持ち、眞人を守ってくれる存在。
そして、キリコさんは、生きる術を教えてくれる、人生の師匠としての女性。
なんというか……ファンの方、怒らないで下さいね。マザコン……?
男性の内面世界を表すと、そうなっちゃうのかもなあ。
ただし、「眞人の内面世界」という解釈だけでは、この映画は割り切れない。
大伯父は、恐らく宇宙の謎の存在から、「この世界」を創造する力を与えられた。
だが、上手く行かない。
当たり前だ。
この世界は、微妙なバランスの上に成り立っているのだ。
形の違う積み木を、どう積み上げれば崩れないか。
積み木は、各国だ。種族。経済。宗教。
それぞれ違う形を持つもの。世界を構成する、幾多のパーツ。
それら全てが、永遠に安定する積み方など、あり得ない。
永遠の平和なんて存在しない。人間の歴史は、戦を繰り返してきた。
大伯父さま。いくら頭で考えたって、無理なんだよ。
だから、自分は、現実の世界で生きていく。
これから戦が始まる、どうしようもないこの国で。
なんとか最善を尽くして生きていくんだ。
というのが眞人の結論だったのではないでしょうか。
だからこそ、タイトルが「君たちはどう生きるか」。
あ、全て私個人の感想です。
しっかし、これを真正面から描いた宮崎駿監督って、やはり凄いなあ。
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