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コモスタクト ―星々を結ぶ意志―  作者: パンチャー
第3章 第一次ウラニア会戦 前編
39/44

開戦

 ウラニア星系に属する各国――特にその防衛の要たる中央評議会、そして独自の警戒網を敷くアストレオンの超高感度索敵レーダーには、不気味な前兆が起き始めていた。

 広大な宇宙の暗闇、その遥か彼方の深淵から、確実に『巨大な何か』が刻一刻と、そして無慈悲にこちらへ向かって迫りつつあった。計器が弾き出すエネルギーの質量反応は、これまでウラニアが経験したどの戦いをも遥かに凌駕している。それはまさに、嵐が訪れる直前の、重苦しく息の詰まるような静寂だった。

――――――――

 ここは、新興国家アストレオンの総司令室。

 無数のホログラムモニターが明滅する中、索敵担当のオペレーターが悲痛な声を上げた。

「サーモン陛下! 南南東の方角から、大量の未確認熱源を感知! ――艦影です! 凄まじい規模の艦隊が、こちらに向かって超巡航速度で進行中です!」

「何だと……! ついに来たか。南南東からか……」

 サーモンは椅子の肘掛けを強く握りしめ、鋭い眼光を正面のメインモニターへと向けた。ソラリオン帝国の本隊がついに動いたのだ。躊躇している猶予は一秒たりともない。

「すぐに中央評議会へこの緊急事態を伝達せよ! 同時に、アストレオンはこれより、事前に彼らと共有していた『防衛巡航作戦』を直ちに開始すると告げるんだ!」

「了解いたしました! 直ちに中央評議会の最高司令部へ緊急暗号通信を接続します!」

――――――――

 通信は光の速度を超えて飛び、舞台はアストレオンから中央評議会側の防衛本部へと移る。

「テミス指令! アストレオンのサーモン陛下より、至急の戦術通信が入電しました!」

 慌ただしく警報が鳴り響く評議会の指令室で、通信兵が声を張り上げた。

「読み上げろ! 一字一句漏らさずにな!」

 テミス指令は険しい表情のまま、正面の宙域マップを見据えた。

「はい! 『我が方の索敵網が、南南東より接近する未確認の巨大艦影を捉えた。アストレオンはこれより、貴国と事前に共有した連携防衛作戦を即時実行に移す。ウラニアの未来を懸け、貴国の武運を祈る』――以上です!」

「そうか、……アストレオンは一歩も引かずに動き出したか……」

 テミス指令は深く息を吐き出し、胸の内で新興国の王の決断に敬意を表した。そして、自らの全将兵に向けて、魂を震わせるような鋭い号令をかける。

「では、我々中央評議会も始めるとしよう。このウラニアが、傲慢なる侵略者の手に落ちず、未来へ生き残るために……! 全軍、第一種戦闘配置! 迎撃体制を整えよ!」

 ――しかし、その直後に訪れた光景は、彼らのあらゆる戦術予測を嘲笑うものだった。

 そこには、劇的な光も、轟くような音も、激しい爆発の前触れすらもなかった。

 ウラニア星系の最外縁に位置する『第七惑星』。その周辺の宇宙空間が突如として、まるで巨大な歪んだレンズを通したかのように、グニャリと不自然に歪み始めたのである。空間そのものが悲鳴を上げ、捻じ切れるかのような超常現象。

 次の瞬間、その歪んだ空間の裂け目から滑り出すように現れたのは、無数のソラリオン帝国の宇宙軍艦――そう、戦闘国家の本気とも言える『半個艦隊』という絶望的な大軍勢であった。

 彼らには、宣戦布告の通信を送るような、生ぬるい意思など最初から毛頭なかった。

 ただ、星の海を果てしなく埋め尽くさんと冷酷に展開を始める、圧倒的な物量。ただそこに『絶対的な破壊の力』として存在するということ、その事実そのものが放つ、凄絶な絶望だけが、ウラニアの宇宙を黒く支配していった。

――次回へ続く。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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