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48 ダンジョンへ行く錬金術師③

「そうだ、竜いないか? 竜。亜竜じゃだめ」


 とりあえず近場で手に入るか、調べられる魔道具を思い出した。


「おお? 竜なら海に水竜が出るぞ。それとダンジョンに火竜がいるな」

「火竜か」


 ハクオウの親戚みたいなイメージだが、別種である。あれより小さい。

 ハクオウも白竜と勝手に呼んでるけど、実際にはもっと長い正式名称があるらしい。


「なんだ? 火竜なら素材を普通に売れるが」

「赤く染まった目玉が欲しい」

「お前、そりゃ怒らせた状態で倒さないといけない奴じゃねえか。牙とか爪とか鱗にしてくれよ」

「なんでよ」

「火竜は怒るとブレス連発するんだぞ? 鱗も堅くなるし! 移動も速くなる! そうなったら怒りが解けるのを待つか逃げるに限る。怒ってない時に首を落とすんだよ。お前、そんなのに高い報酬を出すなよな?」

「えー」

「何人死ぬと思ってるんだ!」

「じゃあおっさんやってよ」

「出来るか!?」

「え? 出来るでしょ?」

「そういう意味じゃねえよ、一線を退いた俺が出るのが不味いって意味だ」

「それじゃあイドと行ってくるかなぁ」

「ああ? そうだお前、イドリアルに変なこと言っただろ! おかげであいつ、依頼を吟味するようになったんだぞ!?」

「普通だろ」

「普通じゃない彼女にしか振れない依頼があるんだよ!」

「そんなの受付すんなよ」

「じゃあ火竜の瞳も受付しねえ」

「じゃあ直接頼むかな。家にいるし」

「そうだった! ちくしょう、手数料欲しいからこっち通せよ」

「それ依頼人の前で言うんじゃねえよ。知ってるからいいけど」


 一応オレも冒険者ギルドに所属あるし。


「あれ? ここでオレが依頼をかけてイドを連れて自分もいけば依頼料の半値が帰ってくるんじゃ」

「変な事思いつくんじゃねえよ! 自分で出した依頼を自分で受けるのはダメだ」

「けちー」

「規則だよ! どうしてもってんならてめえの護衛依頼で出せ!」


 竜の魔眼は探知アイテムのエネルギー源になるのだ。そしてその竜の魔眼はその竜が怒っている時が最も魔力がこもるので、探知アイテムのアイテム捜索範囲が爆発的に広がる。

 手持ちのマグマ鳥の卵に使えば、ある程度近くにあるマグマ鳥の卵の位置が特定出来る。

 おっさんの言う火山島にマグマ鳥の卵があるかどうか、島に近づくだけで分かるようになるのだ。


「というかだ、お前さんのハイポーションや解毒剤のおかげで冒険者達の帰還率があがってるんだ。危険なとこにいかれて死なれても困る」

「あー、お役に立てているようであれば何よりです」


 おっさんのツンデレはいらないけど。


「素材回収の旅に出るなとは言わん。実際に何日か家を空けたりしてるみたいだしな。イドリアルみたいな腕利きが護衛に付くのもいいが、もっと護衛に特化した冒険者を複数雇って貰いたいものだ」

「あんまりごちゃごちゃと大人数で動きたくないんだよな」


 先日使ったフルアーマーセーナみたいに、人前では使いにくい魔道具もあるし。


「気持ちは分からんでもないが、頼む。割引もするし腕のいい冒険者も手配しよう。だから死ぬな」

「わかってる、死ぬ気はないよ」


 オレが死んだら二人も死んだままになっちまう。それにリアナ達ホムンクルスも置いたままには出来ない。


「はあ、そういうセリフを良く聞くんだ。そしてそれが最後の言葉になる奴を何度も見て来た」

「やめて、そういうフラグ的な事を言うの」

「火竜の烈火眼、一応受けて置く」

「了解、待ってて来ない様なら自分で行くよ」


 セーナとイリーナがいればたとえ怒っていても勝てる相手だ。


「……なるべく腕のいい奴に声をかけよう」


 おっさんとの話し合いが済んだので、今日は帰る事に。あ、カテジナさーんハイポ納品しとくねー。






「すまん、ダメだった」

「そっかぁ、みんな命を大事にしてていいじゃない」


 それから数日後、おっさんが謝りに来た。


「火竜狩りに慣れているパーティにいくつか声をかけてみたが、どこも断られた。イドリアルにも頼んだが、怒る前に殺してしまったと……」


 イドは強すぎたらしい、怒るどころか怯えられてしまうとオレに報告してきた。


「すまん。武器や防具として火竜の素材を専属で入手することの出来るパーティはいるんだが、そいつらも危険を冒せないと言ってな。最近は錬金素材の回収として行動していたパーティがいなかったのがな……」

「おっさんの時はいたのか」

「ああ。対火装備でガチガチに固めたパーティがな」


 確かに、火竜の瞳は錬金素材として使うものだ。錬金素材として必要とする人間がいないと冒険者としては持ち帰ってこない物だろう。

 鱗や牙、角の方が早く捌けるからね。

 売値だけで言えば、火竜の烈火眼の方が遥かに高い。しかし採取するには怒らせた状態で倒さなければいけないし、持ち帰るには専用のケースにいれて持ち帰らないと行けない。

 冒険者としてはそこまで危険を冒せないのだろう。


「しゃあないな。自分で行くか。装備ガチガチに固めて」


 錬金術師はそれが出来るからずるいのだ。


「イドが持ち帰ってきた火竜の素材もあるし」


 とりあえず倒してきたと言って丸ごと持って帰ってきたからね。

 火竜の顔が引きつって死んでたのが印象的だった。

 武器の作成代の足しにしてと丸ごと渡された時にはこいつどうしてやろうかと思った。よく街に入れて貰えたな。

 工房に入れる為に家の前で解体ショーをする羽目になったのだ。


「イドリアルを護衛につけるか?」

「いや、イドは近づいただけで怯えられたって言ってたからダメだ。今回は怒らせないといけない」

「むう、この街であいつ以上の実力者はいないのだが」

「この領での間違いじゃね?」


 何度も言うが、エルフは異常なのだ。


「そうなると、火竜狩りの連中に声をかけるか……しかし、来てくれるか?」

「そうだなぁ。報酬とは別に対火竜装備を作ってやるか。それをあげれば使いたがるかもしれないし」

「まあ提案は出来るが」

「紹介してくれー」


 と、いう訳でおっさんと一緒にその冒険者パーティの拠点に移動。

 護衛役にイリーナも一緒だ。

 Aランクのパーティらしいが、庶民としてはかなり大きい部類の家についた。

 ドアノッカーを叩いて人が来るのを待つ。


「はいはーい、あ。店長さん、それに……マスター」


 何度かウチの店で買い物をしていた人だった。


「おう、今度は来たぞ」

「あー、火竜の件ですか。それに店長さんまで、はあ。受けないっすよ僕らは」

「その事で、提案があるんだ。おっさん、ここからはオレが話すからもう戻っていいよ」

「……勝手に報酬のつり上げをされちゃ敵わん。俺も立ち会う」

「そう? じゃあ話、いいかな?」

「まあ、話だけであれば」

「悪いな」


 余り歓迎はしてくれないみたいだけど、話だけは聞いてくれるみたい。この街の謎の良い人シリーズの人でよかった。






「錬金術師のライトロード、まあ好きに呼んで」


 もう店長で通ってるみたいだし。


「イリーナですっ!」

「「「 かわいい 」」」


 ソウダネ。


「えっと、パーティ内でアタッカーを務めてる剣士のカブラです」


 茶髪、ガタイのいい男性。


「盾役のグリン、ドワーフよ」


 ちっこい女性。流石にイリーナより大きいけど。


「斥候と遊撃担当のケビンだ」


 茶髪、細身の男性A。


「魔法担当のジャックだ」


 茶髪、細身の男性B。


 4人で1パーティを組んでいるAランク冒険者『烈火』だそうだ。

 火竜との戦闘に特化させて、荒稼ぎをしている冒険者チーム。良く耐熱ローションとイチゴ味のハイポーションを買ってくれてた人達だ。


「聞いていると思うけど、火竜の烈火眼が欲しくて依頼に来ました」

「それならお断り致しました」

「うん。だから再度お願いをしに来たんだ」

「や、店長さん。軽く言うけどね、火竜の目が赤くなる時って怒ってる時なんだよ? 僕たちはそうなる前に倒せるように何度も戦って何度も逃げ帰って、装備を整えて戦闘ロジックを組み立てて今やってるんだ。あれが怒ってる時には手が出せないのは僕たちがこの街で一番知っているつもりだ。だからこそ、その依頼は受けない」

「分かってる。だから君たちには火竜のいるボスルームまでの案内と護衛、それと火竜を怒らせるまでをお願いしたい。火竜が怒ったら逃げてくれ」

「は?」

「火竜、というか炎系に対抗出来る装備を提供する。その装備を渡すからオレが欲しているもう一つの素材の回収にも協力して欲しい」

「装備? オレ達の装備は十分と言っていいほど炎への耐性は持っているぞ」

「そんな護衛依頼聞いたことないぞ」

「でもオレの店で耐熱ポーション買ってるじゃない」

「そりゃ、顔やらを守るのに塗っておかないといけないからな。あの炎を正面で受けるとなると、体はともかく顔が熱いし目も開けていられなくなる」


 戦闘中に目が開けられないのは問題だもんね。


「そこでコレ」


 オレはネックレスを一つ取り出した。炎を模った赤い魔石を嵌めた耐熱用の魔道具だ。


「これは?」

「君たちが普段顔に塗っている物と同じ。いやそれ以上に炎に強くなれる魔道具。これを起動させれば1時間は炎を全く受け付けなくなるよ」

「本当か!?」

「そんな魔道具があるの?」

「聞いたことないぞ」

「オレのオリジナルだからね。店にも売りに出してない」


 グランベヒーモスの皮と体毛が手に入るまでは、こういう魔道具を使って状況に合わせてクラスメート達に装備させていた。

 全属性に対応できる防具の素材が手に入ってからは、死蔵していた物だ。

 炎だけでなく、水や氷、雷に鉱物毒などそれぞれの用途に合わせて色々と作ったのだ。


「どこまで効果があるか……」

「そんなお宝を僕達にくれるのかい?」

「ああ、依頼を受けてくれるなら全員分用意しよう」


 クラスメート達の分だけでなく、最前線に同行する騎士団の主要メンバーにも渡したりしていたので数はたくさんある。ほとんどの人達は返してくれたが、一部の人間は涙目になって返そうとしてきたので進呈したけど。


「それの効果を見たい」

「じゃあ危ないから街の外に行こうか」


 オレは手提げから出した耐火のネックレスを剣士のカブラさんに渡したまま席を立つ。

 おっさんも含めて興味津々だったので、全員で外に出る。

 戸締りちゃんとしなよって言ったら慌ててたのが面白い。

ふつうのぼうけんしゃがあらわれた!

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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