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46 ダンジョンへ行く錬金術師①

「だ、だれですかこの子は!」

「いらっしゃい、ませ?」


 手負いの冒険者に雑にポーションをぶっかけてたらミーアちゃんがお店に顔を出してきた。

 あ、なんか久しぶり。


「ししょう!」

「はいはい、いま治療中だから後でねー」

「そんなけがもうなおりますよ!」

「や、一応毒も食らってるみたいだし」

「そりゃねえよミーアちゃん、あとリアナちゃんに診て貰いたかった……」


 呻くような声を出す冒険者。

 店を開けてからというもの、怪我人や病人の診断をリアナに任せまくってたら軽傷の冒険者が押し寄せるようになってきていた。

 まあリアナは可愛いからしょうがない。

 ただ、本当の急患が来た時に対処できなくなると困るので男のオレが診るようにして、野郎共をシャットアウト中だ。

 急患用のベッドがいくつもある訳じゃないし、普通の客の邪魔にもなるしね。


「イリーナは、あるじのイリーナ」

「し、ししょう!?」

「……こいつはリアナとセーナの妹だ」

「みみっ! しっぽ!」

「ああ、ハーフだな。同じ銀髪だろ?」

「はっ! おなじです!」


 ちょろい。


「つまりリアナさんとセーナさんにも耳としっぽが!」

「ないですよ?」


 カウンターで対応中のリアナとセーナに視線が集まるが、リアナは軽い返事。

 リアナは髪をかき上げ耳を見せると、一部から歓声があがった。うざい。うるさい。

 セーナはノーリアクション。

 まあセーナは普段から耳出てるしね。


「まあその辺はいいでしょ、と。ほら、これ飲んで終わりだ」

「ありがてぇ」

「次は気を付けろよ」

「あ、お代は……」

「ギルドから請求するから気にすんな」


 治療内容を紙に書き込んで金額を設定する。

 冒険者の急患の治療は、相手がお金を持ってなかったり、支払った結果生活苦になる場合や、治療費が払えないと冒険者が暴れる危険性があったりもするから冒険者ギルドに請求するのが通常だ。

 普通の錬金術師や、教会のシスター達ではとてもじゃないが冒険者を抑えることが出来ない。乱暴な冒険者一人のせいで街の貴重な治療師が減っては大変な事態になるからだ。

 多少荒れている街でも冒険者ギルドが機能していれば大抵は、この方式を取っているのだ。とりっぱぐれもなくて安心である。

 ちなみに商人ならば商人ギルドに、そういったところに所属していなくても街の人間ならば代官や領主に請求できる。

 直で話をしたがる奴は利用したことが無く仕組みを知らない奴か、値引き交渉をしておきたい奴だ。

 値引きには応じん。


「それよりもおししょー様っ! なんであたしにあたらしい錬成を教えてくれないですか! それなのにあたらしい子をやとうなんてっ!」

「ミーアちゃんは今は魔力を伸ばす時期だ。新しい事に挑戦するべきじゃない」


 魔力量ならおそらく一流の錬金術師と同じくらいあるだろう。この年でそれだけあるのなら更に伸びる可能性がある。

 それと魔力回路の開発だ。一度に大量の魔力を消費出来るようにならなければならない。そしてその訓練にはポーション作成がもってこいなのである。


「でも! でも!」

「ミーアちゃんはいずれ、お父さんの工房を再開させるんだよね?」

「はい!」

「じゃあ錬金術師の資格を取る為に、いずれは王都の学校かCランク以上の錬金術師の弟子にならないといけない」

「あたしのおししょーさまはおししょー様です!」

「オレは教える事は出来ないよ、弟子を取る気もないし時間もない」

「ええ!?」

「おいおい、先生! 教えてやれよ!」

「お前、あんまり店に出ないじゃねえか!」

「「 そーだそーだ! 」」


 ちっ、ここにもいたかミーア信者。


「だまらっしゃい。そもそもオレはまともな指導を受けてないんだ。実践派なんだよ」

「え? 店主殿はゲオルグ様のお弟子様では?」


 そんなタイミングでドアで店に入ってきた女が余計な事を言った。

 ビキニアーマーの露出度がさらに上がったケーシーだった。






「「「 えええええええええええ!? 」」」

「おい、言うなよ!」

「え? え?」

「まじっすか!?」

「あの人もう弟子を取らないんじゃなかったのか!?」

「本当にまだご存命だったのか!」


 残念なことにご存命なんです。


「先日、ご本人とお会いする機会があってな。その縁でこの鎧も頂けたのだ、ちょっと恥ずかしいけど」


 横乳とプリケツが見えるレベルだもんな。


「あのエロジジイ、本当に送ってきたのか……阿呆め」

「その時にゲオルグ様が弟子とはっきりおっしゃられていたぞ? 誇るべき事であって隠す事ではないだろう?」

「「「 うおおおおおおおおおお!! 」」」


 お前ら興奮しすぎだ。


「あの方王宮勤めなんだろ!? ライトさんも王宮にいたのか!?」

「そういやそうだ!」

「貴族に囲まれてたのか!」

「ゲオルグ様のお弟子だったのか! そういえばどこか高貴な気配がすると」

「思ってなかっただろ」

「道理で凄腕な訳だ!」

「凄腕だがジジイは関係ないぞ」

「お、おじいちゃんのきょうだいでしだったんですか!」

「握手してください!」

「サインくれ!」

「抱いて!」


 列作んな。抱いてってなんだ? あとイリーナ、面白そうだからって一緒に列に並ぶんじゃありません。


「ひと月も教わってないよ。というかポーションばかり作らされてあとは勝手にレシピを見て覚えろって感じだったな。あの人、自分の錬成ばっかしてたから」


 あれは完全にモノづくりマニアだ。


「ポーションですか……」

「ああ、見習いの頃はポーションばかり作っていた。いや、その後も基本的にポーションばかり作ってたかな?」


 自分の窯を大きくしてから、効率的にポーションが作成出来るようになった。結果として大量のポーションを一度に作れるようになってからは更に作成していた気がする。

 戦争で不足してたしね。


「ミーアちゃんと同じだね」

「ししょう! あたしポーション作りがんばりますっ!」


 フンス、と意気込むちみっこ。

 早速家に戻り作ると走って店から出て行った。


「あれ?」

「恐らく、ゲオルグ様のご指導方法と同じだから触発されたのだろう」


 この街で生まれ育ったというケーシーが言った。


「ゲオルグ様は最高の錬金術師様だからな」

「この領では崇拝されてるんだったね……」


 ただのエロジジイなのに。

 あと握手なんかしないから列を崩せ。

 解散かいさーん。

しんしょうにとつにゅうです!

By イリーナ

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こんな作品を書いてます。クリックするとそれっぽいところに飛びます
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[一言] 「ギルドから請求」←「ギルドに請求するから」か「ギルドから徴収するから」が適切でしょう。
[一言] >「イリーナは、あるじのイリーナ」 あれ、イリーナまたちっちゃくなった? というか、可変?
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