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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
血濡れの守護天使
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第12章-12 血濡れの守護天使

ジュリとジョンの前に現れたのは、先ほど顔の皮膚を裂かれて血塗れとなったフランク・ヴァリン。

血塗れとなった右手で顔を押さえ、空いた左手でジュリとジョンを制止する。


「彼女は、私が呼んだんだ……。 私の、罪だ……」


 フランクの頬には小さな穴が開いており、空気をそこから漏らしながら喋り始める。顔色はショックから白くなりながらも、その目はしっかりとジュリとジョンを捉えていた。

だが、次の言葉を吐き出そうとした瞬間にフランクの裂けた皮膚を掠めて、チェーンソーの刃が宙を斬った。


「邪魔」


 ジュリはチェーンソーの刃でフランクを威圧すると、白い煙幕が晴れ始めた”天使”の元へと駆け出した。

そのジュリの背を追ってやや遅れながらもジョンが続く。


「悪いが、あんたの演説を悠長に聴いている時間はないんでな」


 ジョンはフランクの横を走り抜けると同時に、ぼそりとつぶやく。

フランクはジュリのチェーンソーによる威圧により、尻餅をつきながらもその目線はジュリとジョンを追っていた。



 ジュリは堅いコンクリートの上を駆け抜けて、”天使”へと突進する。右手の皮膚は無残にも裂かれ、その血濡れの手で壊れかけのチェーンソーを大きく振りかぶる。

ジョンは急激な出血から、震える手を押さえながらマグナムを天使へと向ける。

 

 白煙の裂け目、突進したジュリの姿を天使は血走った目で捉える。先ほどまでの優しい表情は一切消え、猛獣のような怒気を孕んだ表情を浮かべる。

天使の手がジュリの右手を掴むと同時に、チェーンソーの刃が天使の眉間へと食い込む。


「さっきの、お返しよっ……」


 天使のヒビ割れた眉間にチェーンソーの刃を突き立てながら、ジュリは天使に掴まれた右腕の痛みを堪える。・

天使に再度掴まれた右腕は、今度は皮膚だけではなく筋肉が裂け始めていた。そしてジュリがチェーンソーの刃を回転させて天使の眉間の奥へと突き進む振動で、骨から筋繊維が地面へと落ちて白い骨の一部が露出する。


「俺からのお礼も喰らえ……」


 ジョンもマグナムが火を噴き、今度は天使の両の目を正確に射貫く。

1発の弾丸では眼球が少しへこむだけであったが、ジョンは何度も正確に同じ箇所を撃ち続ける。


 ジョンが2回はマグナムをリロードして弾丸を吐き続けると同時に、ジュリはチェーンソーのエンジンを大きく吹かしながら天使の眉間の奥へとその刃を少しずつであるが推し進める。

辺りには甲高い金属と金属がこすれる音が鳴り響き、チェーンソーの刃と天使との間に火花が飛び散る。


「これで、お終いよ……」


 ジュリは半分ほどめり込んだチェーンソーの刃にさらに力を込める。天使は苦痛からか苦悶の表情を浮かべながらも、ジュリを振り払おうともがき続ける。

ジュリは振り落とされないようにしながらも、天使にとどめを刺すべく最後の力を込めてチェーンソーを握りしめる。


「えっ?」


 突然、先ほどまで響いていた甲高い音が止んで、2つの異音が響いた。

1つはジョンの弾丸が天使の目玉をついに砕いて、陶磁器が割れたような音。そしてもう1つは、ジュリのチェーンソーの刃が過負荷に耐えきれずにちょうど半分ほどで折れた音。

 

 ジュリの口から驚愕の声が漏れる。さらに突然、手元の抵抗がなくなったことで、バランスを崩したジュリ。バランスを崩したのはほんのつかの間であったが、その瞬間天使はジュリを掴んで引き剥がす。

そしてジュリはチェーンソーの刃を天使の眉間に残したまま、宙に放り出されたのであった。

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