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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
血濡れの守護天使
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第12章-4 血濡れの守護天使

東京都の文京区にある監察医務所。そこは自殺、他殺、不審死といった、様々な死亡理由を医学的な面から検査をする建物である。

その建物の中、自身のデスクで濃いコーヒーをすすり、時々湯気で曇った眼鏡を拭きながらパソコンに向かっている老齢の男が居た。


「ふう……」


 年のせいだろうか、凝った肩を軽くたたきながら椅子の背もたれに身を預けて背伸びをする。この老人の名は飯田(いいだ) 大輔(だいすけ)、司法解剖を行う法医学者であった。

司法解剖を終えた後の資料を作成していたのだが、仕事はあの”連続猟奇殺人事件”により、大幅に遅れてしまっていた。


「飯田先生、僕は今からお昼ご飯を食べに行きますけど、一緒にどうです?」


「んん、ああ。もうそんな時間か。いや、私はもう少し仕事を片付けてからにするよ。ありがとう」


「そうですか。じゃあ、いってきますね」


 飯田に声を掛けた職員は、そのまま足早に部屋を出ていく。

時刻は昼を少し過ぎた頃、周りに居た職員たちは昼の休憩で誰1人周りに残っていなかった。


「さて、私もそろそろご飯にするかな」


 そう言って飯田は、シャツが張るほど肥えた腹を揺らしながら立ち上がった。

そして、椅子に掛けてあったコートを手にして部屋を出た瞬間、ちょうど部屋に入ろうとした二人組にぶつかりそうになる。


「おっと、すみません」


「久しぶりね、”合鴨先生”」


 飯田はその呼びかけに少しだけ驚いた表情をし、そう自身を呼び掛けた女をまじまじと見る。


「おお、ジュリちゃんか、久しぶりだなぁ! 最近ここには来なくなったから、死んだかと思ってたぞ」


 飯田に声を掛けたのはジュリ、その隣には彼女の兄であるジョンも立っていた。

ジュリだけが飯田のことを”合鴨先生”と呼んでいたのだった。あだ名の理由は、飯田が白い髪と蓄えた髭を持ち、白衣を着て全身真っ白なのに、唇だけがやや黄身がかっていたからであった。


「笑えない冗談ね。ところでお願いがあるんだけど、良いかしら?」


「ああ、それは別に構わないが、何だ?」


「例の連続殺人事件の被害者を見せてもらっても良い?」


「……わかった。こっちに被害者は安置してある」


 そう言うと、飯田はデスクから鍵束を取ってきて、2人を死体安置所に案内し始めたのであった。

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