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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
血濡れの守護天使
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第12章-3 血濡れの守護天使

 天が高く感じられるような秋の青空。少しだけ肌寒く感じられる日に奏矢ジュリと彼女の兄であるジョンは、都内に建てられた交番の一室に並んで座っていた。ジュリは衣替えしたのかデニムジャケットを羽織り、膝下までのスカートという服装であった。

ジュリとジョンを挟んで、眉間を押さえた状態で眉をしかめた警視庁所属の清水がパイプイスを揺らしながら天井を仰いでいた。


「わざわざ人をこんなところに呼びつけといて、その態度は何なのかしら?」


「……ああ、ちょっと前に、な。今回の件で地域住民のやつらが警視庁の受付で騒いでたのよ。警察の職務怠慢だってな。それでその対応に追われていたら、このザマだ」


「ご苦労さん。 ……なあ、依頼ってこのことか?」


 ジョンは足下に置いた自身の革製の鞄から、今朝届いたばかりの新聞を机に投げ出した。

その広げられた新聞の見出しには『止まらぬ凶行。8人目の被害者。警察は容疑者を特定できず』と大きく記載されていた。


「ああ、それだよ。全く、何も知らないってのは気楽だよなぁ」


 清水は記事に指を指しながら、その渋い表情をさらに渋くする。

見出しにはさらに『8人目の被害者 吉田(よしだ) 達樹(たつき)君 小学3年生がゴミ捨て場にて無残な姿で発見された』と記載されていた。


「今回お前たち2人に依頼したいのが、この一連の事件の解決だ。 ……頼めるか?」


「別に構わないけど。 で、事件の詳細を教えて欲しいわ」


「ああ。ことの起こりなんだが――


 最初の事件は、15日前。早朝にゴミ捨てをしに来た近所のバアさんが第一発見者だった。

1人目の被害者は、確か12歳の少年で顔の皮膚を剥がされて、目玉をくり抜かれた状態で発見されたんだ。ゴミを漁りに来たカラスにつつかれているその死体を、そのバアさんは直に見ちまったんだ。

腰を抜かして、すぐに通報……警察も最初は異常者による事件だと考えていたんだ。


ただ、それが2件、3件続くとなると、それは”異常者による連続殺人事件”だ。

そしてわざわざ目立つ場所に被害者の死体をおいて、犯行をわざと露見させたこと……そういった異常な事件の犯人は、得てして自身の”こだわり”をひけらかして自滅することが多いんだが、今回の犯人は被害者に”羽”を付けていたんだ。被害者全員に、だ。


 ”羽”は白い合鴨(グース)に一見すると近かったんだがな。

羽の持ち主を鑑定するためにDNA検査に掛けたら、持ち主は鳥じゃなかった。結果は人間って出たんだよ。

だがこれだけの情報じゃあ、まだ犯人はどういった存在かは特定できずに捜査に時間が掛かるだけだった。


 犯人の性別、年齢、居場所……全く分からなかったんだが、とうとうその犯人の姿を捉えたんだ。

7人目の被害者をゴミ捨て場に捨てるところを、たまたまそこを通りかかった通行人が見たんだ。

犯人が被害者をゴミ捨て場に捨てて、飛び立っていく姿を。通行人の証言によると『まるで、天使だった』と。


「――まあ、そんな情報が出りゃあ、相手が人間じゃないことは確定的だからな。だから、今回の”天使狩り”を依頼したいのさ」


「まあ、取りあえずこの事件を詳しく知っている人に会いに行きましょうか」


「ああ、そうだな」


 2人はそのまま席を立ち、天使の姿を探しに交番を出て街を歩き始めるのであった。

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