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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
番外編 色欲の悪魔
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色欲の悪魔 Ⅲ

相木七菜様のhttps://ncode.syosetu.com/n8594em/

に第2話があるので、先にお読みください。

 街灯が(まば)らな繁華街の路地裏。今まで明るく道を照らしていた街灯がカチリカチリと明滅し始める。

その一瞬だけ暗くなった街灯の下に現れる3人の男。男たちは3人とも高級スーツに身を包み、綺麗に整えられた髪から覗く、一対の角。日中であれば、男たちに角が生えていることを除けば、ただの通行人にも見えただろう。

 だが、アリスとジュリたちを挟んで立つ3人の男は、街灯の明滅の一瞬で現れ、殺気立ったその異様から、ただの通行人では無いことは明らかであった。


「ねぇ、この人たちはアナタのお友達かしら? ……余り良い趣味じゃないわね」


「冗談は後にして!」


 ジュリの言葉にアリスが反応すると同時に、男たちも動き出す。

数はジュリたちには2人、アリスたちには1人。男たちはまるで短距離ランナーのような姿勢で地面を蹴ると、アリスたちに飛びかかった。


 アリスに襲いかかった男は、アリスの心臓をえぐり出そうと鋭い爪のついた手を伸ばす。

だがアリスにその爪が到達する直前、男の腹部が大きく裂け、赤黒い臓腑と不快な臭いがする汁を辺りにまき散らす。


「……アリスには、手を出させない……」


 男の腹部をえぐったのは、チェシャ猫の持つモーニングスター。

大きく振りかぶられたモーニングスターの先端が、男の腹部を突き抜けて背中の一部をえぐり取る。男の腹部は上半身を支えきれずに、大きく前のめりに倒れそうになるが、突進してきたときの勢いは止まらない。

男がそのままアリスに抱きつこうとした瞬間、男の頭部が霧散する。


「さようならっ!」


 男の頭部は、アリスの釘バットによって、カボチャのように砕け散ったのだ。

頭部を無くした男は、糸の切れた人形のように地面へと崩れた。


 一方で、ジュリたちにも2人の男が襲いかかる。片方の男がジュリに襲いかかろうと手を伸ばした瞬間、ジュリのチェーンソーの刃によって男の二の腕から先が切断される。

男の腕が地面に落下したと同時に、ジュリのチェーンソーの刃が男の胸部に向かって、まるで鞘に収められる刀のように差し込まれる。胸部に突き立てられた刃の隙間から赤黒い血液が噴き出し、男の口からは血の泡を吹き出す。


 ジュリがチェーンソーで男の胸部を突き刺した隙を見て、後続の男がジュリに向かって飛びかかる。

だが後続の男が飛びかかる瞬間、重い音が繁華街に響き渡ると同時に男の左胸に大きな穴が空く。その重い音の元は硝煙を立ち上らせている、ジョンが手に持つデザートイーグルであった。

左胸に穴が空いた男は、自身の胸をまさぐるが心臓は既に弾けて床にこびりついていた。ジュリは無防備になった男の首へと、チェーンソーの刃を振り下ろす。


 男に振り下ろされたチェーンソーに勢いがありすぎたためか、男の首は床に落ちずにアリスに向かって吹き飛んだ。

アリスは自身に飛んでくる生首をちらりと視認すると、まるで野球選手の様に釘バットを構えて男の首をボール代わりに打ち出した。


男の生首がビルの壁に勢い良くぶち当たり、血液の代わりに黒いタールのようなものが壁にこびりつく。そしてその生首全体がタールのようなものに変っていき、闇に溶けるように無くなる。

ジュリは足下に転がる首なし死体を蹴り飛ばし、いきなり厄介ごとに巻き込まれたことで不機嫌そうにアリスたちに視線を送る。


「それで、静かになったところで、こいつらとアナタたちの関係は何なの?」


「本当に日本の警察は無能なのね。何もアタシたちのことを警察から聞いていない訳!? はぁ……あたしはアリス、こっちの子はチェシャ猫。それでこいつらは悪魔よ……雑魚ばっかりだけど。で、あたしたちは天使で悪魔狩り(ゴミ掃除)をしてるのよ」


「話がよく見えないんだけど、つまり私たちの同業他社ってこと?」


「……それで、良いわ。とにかく、あたしたちはアンタたちが追っている”犯人”を協力して捕まえる様にいわれてるの。気は進まないけどね!」


 アリスは如何にも不機嫌といった表情で、ジュリを睨み付ける。ジュリもアリスと同じくらい不機嫌そうな表情で睨み付け、空中で視線がぶつかって火花が散る。

その様子を見ながらジョンは胸からタバコを取り出して咥えると、火をつける。


「まあ、とにかく一端ここから出ないか? いくら何でも惨殺死体の前で話し合いをすることはないだろう?」


「……それなら、平気……」


 チェシャ猫がそう答えると同時に、男たちの体が黒いタールのように(とろ)けて灰になり、風に吹かれて空へと消える。

後に残されたのは、主を失って地面にへばりつく、スーツの残骸のみであった。

その様子にジョンは口からタバコを離すと、小さく口笛吹く。


「これなら、後始末はしなくても済みそうだな。取りあえず、お互いの情報交換もしたいし、近くのファミレスにでも行かないか?」


「まあ、あたしたちは構わないけど、その前にそっちのお連れさんをどうにかしてくれない?」 


「私も構わないわ。 ……それなら兄さん、早く行きましょう?」


 そうして4人は薄暗い路地を抜けると、ファミレスを目指して歩き始めたのであった。

 

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