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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
オルハ評議会
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第11章-6 オルハ評議会

鈴が案内した部屋は、10畳はあるフローリングの部屋であったが、木製の机とイス、白い清潔なシーツと枕のベッド、こじんまりとしたクローゼットだけという簡素な部屋であった。

鈴は先ほどスーツの男に渡された小包を腕で抱きしめながら、一緒に部屋に入ってきたジュリとジョンを振り返る。


「ここがワタクシの部屋ですの。くつろいでください」


「まるで病室みたいな部屋。……殺風景ね」


ジュリはゆっくりと部屋を見渡すと、素直に感想を鈴へと投げる。

そのジュリの言葉に、一切表情を変えずに鈴は答える。


「ええ、否定はしませんわ。いらないものは全て捨ててきましたもの」


「なあ、いらないものを捨ててきた、そのアンタが今大事そうに抱えているものは何だ?」


 ジョンは鈴が大事そうに抱えている小包を指さす。

それが、鈴に依頼された”預かり物”だとは薄々感づいていたが、その小包から漏れ出している異様な雰囲気に質問をせずには居られなかったのだ。


「これがお話ししておりました、これから運んで頂く”預かり物”です。 ……中身はお伝えできませんが」


ジョンは頭をガリガリと掻き、諦めたようにため息を吐くと胸のポケットからタバコを取り出す。


「なあ、1本良いか?」


「ごめんなさい、遠慮してくださるかしら」


 ジョンはタバコを胸ポケットに戻すと、残念そうに肩をすくめる。


「それでさっきアナタが言っていた、椿組とかサザンカ組とかのことなんだけど。残る組は花菖蒲、アサガオ、菊の3つかしら?」


「あら、知ってらしたの」


「熊本の肥後六花なら、有名じゃない……。 アナタたちと熊本、何か関係が?」


「意味なんてありませんわ。強いて理由をいうなら、この方が可愛いでしょう?」


 その鈴の言葉にジュリは目を丸くして、兄と同じくため息を吐く。

これまでで分かったことは、祝福された仔らからの”預かり物”を、肥後六花にちなんだ椿、サザンカ、芍薬、花菖蒲、アサガオ、菊の6チームで運ぶことだけであった。


「それで、これからの予定はどうなるんだ?」


「夜の8時にこの支部から、6組み同時に、それぞれが陸路、空路、海路を使って出発します」


「目的地は?」


「静岡のとある港まで。 ……詳細な場所は言えませんが。ワタクシたちは海路を行きます。時間まで、こちらの部屋でくつろいでいてください」


 鈴はそう言いながら、時計をちらりと見やる。

時計の針は、午後2時32分を指していた。


「分かったわ。時間になったら、起こしてくれる?」


「俺も寝るから、頼んだ」


そう言うと、ジュリとジョンは壁を背に座り込むとすぐに寝息を立て始める。

鈴はどこからか持ってきた毛布を2人に掛けると、ジッと時計を見つめるのであった。






 約束の時刻である夜の8時。この日は、空には分厚い雲が掛かっており、いつもよりも暗い夜であった。

膝下まである紺色のトレンチコートを翻して鈴は寝ているジュリとジョンを起こすと、3人は支部を出たのであった。


 

 3人が支部を出てから、2時間後のこと。その暗い夜の中、船のある海岸へと向けて猛スピードで駆ける、リムジンが1台。その胴長の車をものともせず、右へ左へジグザグに動きながら、他の走行車を抜き去っていく。

ジョンは窓から身を乗り出すと、後ろへ向けて、胸から抜いたマグナムを発砲する。重い音が何発も響き、リムジンの後ろを追ってくる”それ”の眉間と足へと吸い込まれる様に弾丸は当たるが、ジョンは苦々しそうな表情を見せる。


「アイツは一体何なんだ!?」


「あれが何かは分からないけど、すごい目立つわね」


 リムジンの背を追うのは、全身が激しく燃えさかる人型の何か。

その人型は、時速100キロを指しているリムジンの背を走って追いかけて来ているのであった。



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