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第2章-4 妖精博物館

ジュリとジョンの2人は、先ほどからひどいうめき声を上げている警備員の男に近づいた。

懐中電灯の光を当てると、まぶしかったのか男は右目を細める。


「アナタが通報者ね?何があったの?」


「ああ……あ、あ……ありがとう……ございます……お、俺、助かったんだ……」


「お礼は良いから、何があったのか教えてくれるかしら」


「お、俺にも……わかりま……せん。館長と……副館長が収蔵庫に行ったと……思ったら、奴らに……襲われて……」


「他に何か気がついたことは?」


「そ、そういえば、副館長が……何か花瓶みたいなのを……持ち込んで……いました……。ああ、目が……目がよく見えない……早く……病院に……」

その花瓶のようなものと聞き、ジュリとジョンは目を合わせる。


「”妖精のマザー”を蘇らせたのか……」


「馬鹿みたいじゃなくて、ただの馬鹿ね。」


「ジュリ、清水に後始末を前倒しするように伝えてくれ。ここの処理は俺がしておくから」


「じゃあ後はお願いね」


ジュリはそう言うと、少し離れて電話を掛け始めた。


「お……おい……早く……」


警備員は近くの居たジョンに声を掛ける。ジョンはその言葉に反応し、警備員の正面にしゃがみ込んだ。


「なあ、あんた。フェアリーの鱗粉には癒やしの効能があるんだが、なんでか分かるか?」



「……?」


警備員はすぐに病院に連れて行ってもらえると思っていたため、この質問に困惑する。


「理由は2つあるのよ。1つ目はあいつらは生きたまま肉を喰らうのが大好きなんだ。だから死なないように、獲物を生かすのさ。今のあんたみたくな」


ほら、と言わんばかりに、ガラスのケースに光を当てる。そこにはガラスが鏡のように反射して、2人の男を映し出していた。1人は懐中電灯を向けるジョン、そしてもう1人は……


「あ……あ……」


 ガラスには、人の形をした赤黒い残骸が映っていた。

下腹部までの肉は食い千切られ、所々白い骨が露出している。みぞおちの辺りは完全に喰い漁られ、背骨と彼が背にした壁が見えていた。左目は落ち、頭蓋が割られて脳の一部を覗かせていた。


「ひ……ひ……」


「あと2つ目の理由なんだがな。あいつらは獲物を生かしておけば、次の獲物をそいつが呼んでくれるってことを分かっているんだ。要するに、今のあんたは釣りエサなのさ」


しかし警備員はこの言葉に反応せず、喉から乾いた呼吸しかしない。


「だから、まあ、その……運がなかったな?今、楽にしてやるから」


「ひ……やめっ……たすけ」


ジョンは散弾銃を警備員の頭に向けると、発砲した。血糊が壁一面を、赤黒く染め上げる。

顔の半分が消し飛んだ警備員は、ゆっくりと横に倒れた。


 「兄さん、電話、終わったわ。10分後に決行するって」


電話を終えたジュリがジョンの元に戻ってきた。


「ああ、わかった」


ジョンはそう言うと、目の前の死体を無視して第2展示室を後にした。

天井から激しく打ち付ける水音が、静かな博物館の中で大きく聞こえていた。

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