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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
オルハ評議会
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第11章-4 オルハ評議会

鈴、ジュリ、ジョンはセスナ機の座席に座り、オルハの岩手支部を目指していた。セスナ機の高度計は3000メートルを指していた。

セスナ機を運転しているのは鈴。その後ろの座席にジュリ、ジョンと続いていた。


「飛行機も運転できるのね」


「あら、レディの嗜みの1つでしてよ?」


 声を掛けたジュリに、軽快に答える鈴。

そして自身の腕前を披露する様に、セスナ機を取り回して大きく宙返りをする。


「どう、ワタクシの腕前は?」


「まあまあね。 で、”祝福されし仔ら”の情報って? ……特にあの傷の男について聞きたいんだけど」


 今まで上機嫌そうにセスナ機を運転していた鈴は、その言葉を聞いて無言になる。そして、周りを見渡して、盗聴器が無いことを確認すると声をひそめて喋り始めた。


「この話は他言しないでくださるかしら? ……これはワタクシたちの人には知られてはいけない歴史ににも関わりますので」


 鈴のその言葉にジュリは無言で頷くと、それを確認して鈴は再度口を開いた。



 ――まず、その傷の男が誰か話しますわね。彼の名前はバーカー、別の通り名では血の修道士とも呼ばれていますの。

彼が歴史に現れたのは1658年の魔女裁判で、彼は判事として様々な魔女を捕らえ、拷問し、惨殺していたみたいですの。

彼は判事であるとともに、当時は敬虔な修道士として有名で、人望が厚くて周囲から信頼されていた人物でしたの。


 元々彼が人間だったか、怪異だったのかは誰も知りません。しかし、彼が魔女を狩り続けるうちに段々と狂気に落ちていったのは確かみたいです。

最初は嫌々参加していたバーカーでしたが、最後の方には嬉々と罪のない人もその手にかけていたとのことです。


 だが、彼は流石にやり過ぎたみたいで、とうとう彼は上職の人間からも疎まれ始め、怒れる住民によってその地を追放されたとのことです。


 そして彼は世界を巡り始めました……いつの頃からか仲間を引き連れ、”祝福されし仔ら”と名乗り、混乱を招く存在として。

彼が訪れた国では彼の通り名の通り、血の厄災が巻き起こりました。日本のキリシタン弾圧、オスマン帝国のアルメニア人虐殺、第一次、第二次世界大戦……彼が関わるところには、死の風が吹きましたの。


 ワタクシたちが彼と接触したのは、今から20年ほど前のコト。ワタクシたちは、日本で人の目には触れないように過ごしてきましたの。人間社会に溶け込み、同化するために。

彼がなんて言ってワタクシたちに接触したのか、当時のメンバーはもう居ないので分かりませんが、1つだけ分かることは彼の目的に穏健派のワタクシたちが乗ったということ。


 そして16年前、”祝福された仔ら”が崩壊する少し前に、ある物がワタクシたちに預けられました。

預けた時に彼は一言、「大切なものだ。頼むよ」と言って消えました。

そして”祝福されし仔ら”が崩壊すると同時に、彼は姿を消しました。


 先日から続く、オルハ評議会の議員連続拷問事件が起こるまでは。


「……これがワタクシたちが知る彼の全てですわ」


それまで静かに鈴の話を聞いていたジュリが口を開く。


「なんで、今更になってアナタたちはバーカー修道士と敵対を?」 


「彼が、人間社会に害をもたらすとオルハ評議会に知れ渡ったからですわ。 ……人間が居なければ生きていけない怪異もいますから」


「そう。大体の事情は分かったわ ……兄さん?」


 ジュリは先ほどから一言も喋らない兄を振り返る。

そこには飛行機に酔い、青い顔をして明後日の方向を見ているジョンの姿があった。


「ジュリ……あとで説明してくれ。今は間が悪い」


 その様子を見て、ジュリと鈴はクスリと笑い、セスナ機に和やかな空気が流れた。

それから少しして、3人を乗せたセスナ機は岩手県の県境を越えたのであった。

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