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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
人家(じんか)
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第10章-10 人家(じんか)

ジュリは目の前に立つ祠を、その手に持つチェーンソーで次々と細かくしていく。

ジュリが祠を細かくする度に、屋敷も同じ箇所が壊れ、天井は落ちて壁も切り裂かれていく。


「ぬおっ!?」


 ちょうどジョンの上から、屋根を支えていた太い梁が大きな音と埃を伴いながら落下してくる。

それを咄嗟に横に飛んで、なんとか躱すが狙い澄ましたかのように次々とジョンの頭の上へ目掛けて梁が落下してくるのであった。


「アイツは!?」


 ジョンが梁を躱しながら、男の方に視線を向けると、男の顔目掛けて大きな梁が落下しようとする瞬間であった。

そして次の瞬間には、男の顔に梁が突き刺さり、床にまるで杭のように男の顔が打ち付けられる。そして次々と落ちてくる屋根の一部や、細かい梁の一部などが男に降り注ぎ、男の姿が見えなくなった。


「おい、ジュリ! そろそろここから出ないと、俺らも屋敷に潰されるぞ!」


「あと、もう少し」


 ジュリは無残な姿となった祠の土台から叩き切ると同時に蹴り飛ばし、粉々にする。

同時に屋敷も大きく揺れて崩壊していく。


「行くわよ、兄さん」


 仕事を終えたジュリはチェーンソーを背負うと、屋敷の外へと駆け出す。ジョンもその後に続いて、屋敷の外へ駆ける。

しかし、ジョンは屋敷の玄関から一歩出たところでピタリと足を止める。


「コイツは俺の奥歯と顎を痛めつけてくれたお礼だ!」


 ジョンは胸から手榴弾とスタングレネードのピンを抜くと、男に向かって投げつける。そして屋敷から数歩離れたところで、屋敷から爆炎と閃光が上がり屋敷の天井の大半が崩れ去った。


「遊んでないで、早く行くわよ」


「ああ、すまん」


 ジュリとジョンは屋敷までの来た道を全速力で走る。小さな武家屋敷を出て、血管の浮いた洞窟を駆け、木製の廊下に出て玄関から外へと飛び出す2人。

その瞬間、大きな音と埃をを立てて屋敷全体が崩壊する。その埃に思わず咳き込むジュリとジョンの2人であったが、それもすぐのこと。

 屋敷が大きく収縮したかと思うと、地面へと溶けるように沈んでいったのだ。


「終わったのか?」


「ええ。これで依頼は完了ね。 ……あの男が来る前に退散するわよ」


「そうしよう」


 ジュリとジョンは屋敷が完全に無くなったことを確認し、平ヶ岳を降りたのだった。

2人が山を下りてから少し経った頃、屋敷が建っていた一部の地面がゆっくりと盛り上がり始める。

そして地面から腕が生えたかと思うと、1人の男が這い出してくる。そして立ち上がった男はジュリたちが去った方向を無言で見つめると、闇の中に溶け去ったのだった。

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