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第2章ー3 妖精博物館

奏矢(そうや)ジュリとジョンの2人は、博物館の扉を開けて中に入ると、博物館は暗く、静まりかえっていた。2人が胸に着けた懐中電灯の光の筋の中を、数匹の小さな影が飛んでいった。


「フェアリーは光が苦手なのに……入り口近くまで来てるってことは、それなりの数が居そうね?」


ジュリは自身の背後を守る兄に話しかけながら、首を傾けた。彼女の兄であるジョンは、散弾銃を左右に向けて、前方確認をした。


「そうだな。銃の代わりに、ハエたたきでも持ってくれば良かったかな?」


2人はお互いをカバーしながら、通報者の居る第2展示室まで歩を進めた。途中で、ジュリは博物館内の電灯操作盤を操作するが、明かりは点かなかった。


「電源も完全に死んでるわね」


「ああ、今回のは少し面倒だな」


「兄さんよりも頭が良いじゃない?」


「放っておけ」


2人は軽口を叩きながらも、辺りを警戒し続ける。壁には不気味な絵や資料が飾られており、それらは懐中電灯の光を鈍く返すのみであった。


 2人は暗闇の中を、慎重に進む。不思議とフェアリーたちは、入り口に居た以外は見当たらなかった。

そのまましばらく進むと、2人はある扉の前に行き着いた。


「ここが第2展示室ね」


ジュリが、扉の上に書いてあるプレートを照らす。そこには大きく『第2展示室』と表示されていた。

ジュリは大型チェーンソーを構えると、ゆっくりと扉を開ける。


 第2展示室を開けると、光の筋の中を飛び交う小さな人影。

それを視認した瞬間、ジョンの散弾銃が火を噴く。小さな影は数匹まとめて飛び散り、同時に割れたガラス棚に体液がこびりつく。

暗闇の中から、影がこちらに伸びたように感じられる。それらに光を当てると、影の正体はフェアリーの大群であった。


「出てきたな!」


 ジョンはそれらに向けて、散弾銃を次々と発砲する。重い音が響き、音が鳴る度にフェアリーが体液を残して飛び散る。


「っ!」


 フェアリーはジュリの方にも飛び掛かってくる。ジュリはチェンソーを少し長めに吹かすと、飛びかかってくるフェアリーに向けてチェンソーを振り回す。

チェンソーの刃にフェアリーが触れる度に、手足がもげて床に散らばる。


 しばらく、飛んでくるフェアリーを散弾銃で撃ち落としながら、ジョンは笑う。


「こいつら用の殺虫剤が欲しくなるな!」


「黙って手を動かしてくれる?」


ジュリは冷たく兄をあしらうと、黙々とチェンソーを振るい続けた。

少しして、フェアリーたちは2人に飛びかかるのを止めると、次々と部屋の中から飛び立っていく。

光で飛び立った先をジュリが確認すると、通気口に次々と入り込んでいるのが見えた。

 大群の中の1匹がこちらに振り返る。光に照らされたフェアリーの姿は、蝶の羽、人間の体、そしてトンボの頭を持つ奇妙な生き物であった。そいつは光の中で顎を醜く歪ませると、通気口へと消えていった。


その場に残されたのは、ジュリとジョン、そして先ほどからひどいうめき声を上げ続けている男の3人だけであった。

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