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第2章ー2 妖精博物館

初夏の良く晴れた昼も過ぎた頃、ある博物館前に車が乗り付けた。警察からの依頼によって、呼び出された奏矢(そうや) ジュリは不機嫌そうに車から降りた。


「今日は予定があったのに」


「どうせ、お粗末な用事だろう?今回は1人じゃしんどいわ。今日はジュリの大学も休みなんだから、手伝ってくれや」


運転席から降りた彼女の兄、奏矢ジョンはケラケラと笑いながら、妹の文句を受け流した。


「近くのケーキバイキングがキャンペーン中なのに……」


ジュリは文句を言いながらも、荷物を車から下ろし始めた。


 2人が呼ばれたのはアーサー博物館、またの名を『妖精博物館』とも呼ばれている建物であった。

ジュリは周囲を封鎖している警官を見つけると、不機嫌さを隠そうともせずに尋ねる。


「ねえ、何があったの?」


「いえ、私もここを封鎖しておけとしか聞いてないんです」


警官も不思議そうな顔をして答える。少しの間、互いに無言の時間が流れていた。


「おーい!ジュリちゃーん!」


ジュリの後ろから、男の声。


「あら、お久しぶりね。今回の担当はあなた?」


「ああ、とりあえず車の中で話そう」


ジュリと話すのは、警視庁捜査一課第三特殊捜査係、通称”SIT3”(special investigation team 3)の清水であった。

清水は白髪が交ざり始めた頭をなでつけながら、ジュリたちをパトカーへと促した。


 パトカーに乗り込んだ清水、ジュリ、ジョンの3人は、早速依頼内容の話に入る。


「依頼には『妖精博物館に大量発生したフェアリーを殲滅しながら、中に居る人間を救助して欲しい』とあったけど、詳しく教えてくれる?」


ジュリは清水の目を見据えて尋ねる。


「ああ、まず始めに事件の起こりなんだが、7時間前に通報が入ったんだ。『展示していた妖精に襲われた』と」


「それで?」


「普通の通報じゃなかったからな。こっちにお鉢が回ってきたというわけだ。とりあえず様子を見に来たら、博物館中にフェアリーどもが飛び回っていやがった。だから、あんたらに依頼をしたという訳さ」


「救出と言ったけど、何人居るの?」


「通報によると、3人だ。どうやら、通報者は第2展示室、他の2人は収蔵庫に立て籠もっているらしい。あと、これは依頼と別で、俺の上司からも頼みがあるんだが」


「何かしら」


「フェアリーの鱗粉は、たちまち傷口をふさぐ秘薬らしいな。殲滅するついでに何枚か、羽をもいできてくれないか?」


「まあ、構わないけど。あんなものが欲しいのね」


「ああ?」


清水は怪訝そうに、ジュリに聞き返す。


「何でもないわ。まあ、後処理はいつも通りでお願いね?」


「ああ、ぬかりなくやるよ。じゃあ、頼むぞ」


ジュリと清水が仕事内容の確認をしている間、ジョンの方はサングラスをひたすら磨いているだけであった。しかも、「~♪ ~♪」鼻歌を歌いながらである。


「さて、お仕事を始めますか」


あくびをしたジョンは、車から降りる。

ジュリは大型チェンソー、ジョンは散弾銃を手に持つと、博物館の扉を開けるのであった。

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