第8章-7 愚者のハーレム
ジュリは大きくチェーンソーのエンジンを吹かすと、目の前に立つ20人以上の花が咲いた人間を見据える。
「ねえ、アナタたち。雑草の駆除のやり方は知っているかしら?」
ジュリににじり寄る花人間たち。ジュリは多勢に無勢の状況でも平然としている。
「1つ目は、根ごと引き抜くやり方。簡単に言えば、草むしりね」
ジュリは再度チェーンソーのエンジンを大きく吹かす。
「2つ目は防草シートを敷くこと。光を遮断して、雑草を死滅させるやり方」
ジュリはチェーンソーのエンジンをスパークさせる。すると見る間に、チェーンソーが燃え上がった。
「そして3つ目は」
ジュリは燃えたチェーンソーを天井へと掲げた。チェーンソーから立ち上る炎が天井を焦がした。
「”農薬”で駆除よ」
チェーンソーの炎に反応して、スプリンクラーが作動する。大量の水が、配管を通して部屋中を駆け巡る。同時に、20人以上の異形たちが苦しみだした。
先ほど、ジュリは兄に対してスプリンクラーの貯水槽に、大学で保存していた農薬を入れるように連絡していたのであった。
チェーンソーのエンジンについた炎は水により消火されて、何事もなかったかのように、刃は回転をし始める。
農薬によって苦しみながらも、口からツタを伸ばしてジュリに掴みかかろうとするが、動きは鈍い。
ジュリは大きく踏み込むと、自身に突っ込んできた3人をまとめて、首を狩り落とす。
「1,2,3!」
3人は口からツタを吐き出しながら、首が地面に落ちて、濡れた床から水飛沫が飛ぶ。
「4,5!」
ジュリは横に並んだ2人を袈裟切りにする。チェーンソーの刃により、胸から上が斜めに
切断される。2人仲良く濡れた床に転がり、床を流れる水が真っ赤に染まる。
「ろっ!?」
6人目を斬ろうとしたジュリであったが、突然横から突進してくる女。それは口からツタを伸ばした絵里子であった。ジュリは横腹に抱きつかれ、バランスを崩して倒れる。そして強かに頭を打ち、水が跳ねる。
ジュリは組み伏される前に、絵里子の腹部に渾身の力で蹴りを入れる。絵里子は吹き飛び、その後ろに居た花人間とともに床に転がる。
ジュリは素早く立ち上がると、一番近くに居た花人間の頭に向かって、兜割をする。
「6!」
兜割をされた花人間は、頭部を半分に割られて、血と脳漿をが天井に張り付く。そして微かに痙攣しながら倒れ伏した。
ジュリは6人目の頭から、チェーンソーの刃を引き抜くと次に向かってチェーンソーを振るった。
ある者は腕を切られた後、頭を蹴り砕かれる。また、ある者はチェーンソーで胴を真横文字に切断される。さらに別な者はジュリに顔を殴られて、頸椎が砕かれて絶命した。
そうやって、花人間たちは数を減らしていく。最初、部屋には20人以上居たが、今だ生きて立って生きているのは絵里子のみになった。
ジュリは絵里子を見据えると、チェーンソーのエンジンを吹かす。同時にスプリンクラーからの水も止まり、水が少々垂れてくる程度になった。
「アナタで最後ね」
ジュリはチェーンソーを絵里子に向かって振りかぶった。その瞬間、部屋に響く1発の重い音。そして同時にカボチャのように砕け散る絵里子の頭。
ジュリが音がした部屋の入り口を見ると、そこにはマグナムを構えたジョンが居た。
「兄さん、意外と早かったわね?」
「ああ、最近ダイエットをしたお陰かな?」
ジョンはケラケラ笑うと、部屋の中央に生えている植物に目をやる。
「で、そいつが今回の騒動の原因か?」
「たぶんね。早く切り倒して帰りましょう」
ジュリは右腕にはめた漆黒のドレスグローブを振り、水滴を飛ばしてチェーンソーを握り直す。
そしてジュリがチェーンソーの刃をその植物に当てた瞬間、ウツボカズラの中から手が伸びてジュリの腕を掴んだのであった。




