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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
愚者のハーレム
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第8章-6 愚者のハーレム

ジュリは異形と化した絵里子を追いつつ、警察で怪異対策課に所属している清水へと電話を掛ける。


「もしもし……ジュリか。ちょうど今、帝都大学の近くで、『花人間に襲われた』という通報が入ったから、お前に連絡をしようと思ってたんだ」


「今、その花人間を追いかけてるのよ…… どうも、その花は感染するみたい。その被害者が通報した地点で私が斬った男が1人、転がっているわ」


感染するという言葉を聞いた清水は、大きくため息をついた。


「また、消毒しなきゃいけないのか…… で、場所は?」


ジュリは、絵里子が向かう先、帝都大学の校舎を見上げる。


「場所は、帝都大学よ。 ……明日から休校ね」


「わかった、すぐに準備する。気をつけろよ」


 ジュリは清水との通話を切ると、次は兄に電話を掛ける。


「もしもし、兄さん?」


「ジュリか。こっちは何もなかったんだが、そっちはどうだ?」


「大当たりよ。今、帝都大学に向かっているわ」


「そうか、俺もすぐに向かう。余り無茶はするなよ?」


「ええ、分かっているわ」


ジュリは目の前を走る絵里子を見据える。帝都大学の校舎の暗い影が段々と大きくなり、迫る。

そして帝都大学の校門が、姿を現す。その校門は2m程度の高さで、ピタリと門は閉められていた。


 その高さを、絵里子は地面を跳躍し、飛び越える。続いてジュリも跳躍し、門を乗り越えた。

暗い校舎の中を絵里子とジュリは駆ける。そして絵里子はある建物の中へと飛び込んだ。


「……資料館?」

そこは現在使われていない、帝都大学内に併設された資料館。そこは今まで在籍していた教授たちの収集物、研究成果が集められ公開されている場所であった。

悪い言い方をすれば、物置でもあるのだが。


 絵里子に続いて、資料館に飛び込んだジュリは血の臭いが強くなっていることに気がついた。

そして見えたのが、絵里子が地下室の扉を開けて中に飛び込んでいく姿であった。

その扉の中から漏れる、複数の荒い吐息、踏みしめる音、そして一層の濃い血の臭い。


 ジュリはその地下室の扉で立ち止まると、携帯電話を取りだす。

数回のコール音の後、兄であるジョンが出る。


「もしもし、兄さん。今、どの辺りに居るの?」


「今は、帝都大学の校門の辺りだ! ジュリ、お前こそ、どこに居る?」


「資料館に居るわ。ところで頼みたいことがあるんだけど」


「ん? すぐにそっちに行かなくて良いのか?」


「ええ。それでやって欲しいことなんだけど――」




「さて、と」

通話を終えたジュリは、携帯電話をしまうとチェーンソーを構えて、地下室への扉に手を掛けた。

扉を開けると数m程の階段が続き、さらに階段下にある地下室から明かりが漏れていた。そしてそこから、物音が聞こえていた。


 ジュリは明かりを目指して、暗く湿った階段を降りる。何事もなく階段を下りきり、物音が漏れる部屋の前に立つジュリ。

ジュリはチェーンソーのエンジンを吹かすと同時に、ドアを蹴破った。


 その部屋は10畳ほどの部屋であった。そして20人ほどの人間が、部屋の中心に向かいながらゆらゆらと揺れていた。

ジュリは部屋の中心を見やると、そこには2mはある不気味な植物が床から生えていた。その植物に咲いた花は、ジャスミンのような形の、血より濃い紅色の花であった。

また葉が大きく丸まっており、1mはあるウツボカズラのような袋がいくつもついていた。


 今までその花に向かって揺れていた人間たちは、ジュリの侵入に気がつくと一斉にジュリを見る。どの人間にも顔中にはニキビのように蕾が生えており、その中の幾つかは部屋の中心の花と同じものが咲いていた。

そして口からツタを伸ばし、ジュリに掴みかかろうと動き始めた。


 「あら、お邪魔したかしら?」

わざとらしく小首をかしげるジュリ。そして彼女はチェーンソーの刃を回転させたのであった。

 

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