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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
愚者のハーレム
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第8章-5 愚者のハーレム

 民家の屋根から飛び降りたジュリは着地すると同時に、その手に持った大型チェーンソーで、絵里子の喉奥に突き刺さっていた、男の口から伸びたツタを切断した。

その男のツタが切断された瞬間、その切断面から男の物とも、絵里子の物ともつかない大量の鮮やかな紅い血液が噴き出し、道路の排水溝へと流れる。

男は、絵里子の上に跨がったまま、奇妙な甲高い声で鳴いた。ジュリはその男の側頭部に目掛けて、ハイキックをたたき込んだ。


「女の子に暴力なんて、振るっちゃ駄目よ?」

 ジュリに蹴り飛ばされた男は、血をまき散らしながら転がる。男が転がった跡には、鮮やかな血で描かれた1本線が、道路を彩る。

ジュリは足下で呻く、絵里子の方を見やる。そこには呻く絵里子と切断されたツタが、血をまき散らしながらもうねり、ウナギのように絵里子の口の奥に消えていくところであった。


 「これは……」

ジュリは状況が悪化したであろうことに眉をひそめる。絵里子はもはや呻いておらず、白目をむいて痙攣し始める。

次にジュリは先ほど蹴飛ばした男に視線を送ると、男はまさに体勢を立て直してジュリに飛びかかろうとしていたところであった。


 ジュリは大型チェーンソーを横に構えると、男の胴に目掛けてその刃で切り込もうとした。

しかしその瞬間、


「っ!」

絵里子の右手によって、ジュリは足首を掴まれて動けなくなる。ジュリはその手を振りほどこうとしたが、女性とは思えない力で掴まれて解けない。

さらに絵里子は体を弓のように反らしながらも、ジュリの足に爪を突き立てる。


 ジュリは軽い舌打ちをすると、飛びかかってくる男の腹部に向けてチェーンソーを突き立てた。

チェーンソーの刃は回転しながら、男の腹部にめり込んでいく。男の臓腑と肉片がチェーンソーの刃の回転によって、細かく粉砕されてジュリの顔に飛沫のように掛かる。

チェーンソーの刃は臓腑と肉片を撒き散らしながら、男の腹部へとさらにめり込んでいく。いや、めり込みすぎていた。


「……厄介ね」

 男は口から生えた、血が滴るツタの切断面を見せながら、醜く笑う。そして男は、回転するチェーンソーの刃を物ともせず、ジュリに近づいてくる。その腹部から臓腑ち肉片を撒き散らしながら。

男はジュリのすぐ目の前まで立つと、ジュリの肩を掴み大きく口を開ける。

そして、そのぬらぬらとしたツタをゆっくりとジュリの方へと伸ばし始めた。


 男の濡れたツタがジュリの頬を舐めようとした瞬間、ジュリが動く。

「アナタ、ちゃんと歯を磨いた方が良いわよ……臭うわ」


ジュリはツタを避けてしゃがみ込むと、男の下あごに向けて頭突きをする。

それにより、男の口が勢いよく閉じられる。そして、口から伸ばしていたツタが、男自身の歯によって切断される。

男は一瞬だけ、ひるんで後ろに下がった。ジュリはその瞬間を見逃さずに、男の腹部からチェーンソーの刃を引き抜き、足首を掴んでいる絵里子の手を切断する。

そして自由になったジュリは地面を蹴って、男に向かって大きく踏み込む。踏み込むと同時に、チェーンソーを男の首に振り下ろした。


 男の首が地面に落ち、血を吹き出しながら胴体は地面に倒れ伏す。さらにジュリは、チェーンソーのエンジンを吹かすと、胴を上半身と下半身の2つに分断する。

そしてジュリは返り血で汚れた顔を拭うと、絵里子の方へと顔を向ける。


そこには、切断された右手を抱えて走り去る絵里子の姿があった。

ジュリは血濡れのまま、携帯電話を取り出すと電話を掛けながら、絵里子の後を追ったのであった。


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