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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
愚者のハーレム
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第8章-2 愚者のハーレム

ジュリはその日、いつもの通り自身が通う、帝都大学で講義を受けるために、校門をくぐった。いつも通りの大学、講義、会話。

そこには、いつも通りの平穏の時間が流れていた。いや、流れるはずであった。


「ん?」


ただ1つの異物を除いて。


「この臭いは……血?」


 血の臭いが至るところからするのだ。

大学の植え込みから、校舎からその臭いは広がっていた。常人ならば、気にも止めないような微かな物であったが、ジュリはそれを嗅ぎ分ける。


 ジュリは携帯電話を取り出すと、連絡帳を開き、その細い指で画面をなぞる。その指が、ある名前のところで止まる。


「清水さん?」


「もしもし……おう、ジュリか。お前から電話なんて、嫌な予感しかしないな」


ジュリは警察の中でも怪異を専門に扱う課に所属している、清水へと電話を掛けたのだった。


「聞きたいことがあるんだけど。良いかしら?」


「NOって言っても、いつも聞かんだろうが……で、何が聞きたい?」


「帝都大学周辺で、不審な事件とか起きていないかしら」


「ちょっと待ってろ」


 電話口から、キーボードを叩く音が聞こえ、清水はデータベースから帝都大学周辺の事件を洗う。

数分経ち、キーボードを叩く音が止んだ。どうやら、調べ物が終わったらしい。


「おう、何件か怪しいのがヒットしたぞ」


「どんな事件なの?」


「その大学の生徒が何人か、ゴミ捨て場で見つかったらしい。全員、大量失血して失神していたみたいだ」


「たぶん、当たりね。その人たちは今、どこに居るの?」


「さあな? 全員、病院から抜け出して行方知らずだと」


「そう。分かったわ……また何か分かったら、すぐに連絡して」


 ジュリは携帯を切ると、ふと何かに気がつき辺りを見渡す。何故か、血の臭いが強くなったからだった。

ちょうどその時間は、講義と講義の境目の時間。大量の生徒がジュリの横を抜けて、校門から出ていく。

その生徒たちに混じって、植野教授もジュリの横を通ったが、ジュリは余りに人が同時に横を通ったため、その存在に気がつかなかった。少しの間、辺りを見渡していたジュリであったが、踵を返すと人混みに消えていった。


 

 この日の夜、清水の元に奇妙な通報が届く。通報場所は帝都大学のすぐ近く。

それは『花人間に襲われた』という奇妙な物であった。

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