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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
愚者のハーレム
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第8章-1 愚者のハーレム

これまでの主要な登場人物

奏矢そうやジュリ

大型チェーンソーを振り回し、怪異を狩り続ける。一家で怪異狩りの依頼を請け負っているが、休みの日が潰されることを非常に嫌がる。

都内の理系大学に通っており、専攻は応用生物学科。学年は2年で、20歳。髪型はショートで黒髪。碧眼であり、膝下ぐらいの長さのスカートを(怪異狩りのときも)好んで着用する。

好きな動物は柴犬、はりねずみ


奏矢そうやジョン

奏矢そうやジュリの兄で、怪異狩りのときには銃火器を好んで使用する。依頼の時には、妹とともに向かうことが多い。身長178センチで体重は89キロ。髪型はツーブロックで、妹とは違い黒目、黒髪である。怪異狩りのときには、軍用の分厚いジャケットを着込む。

現在年齢は25歳で、日々修行と食い扶持を稼ぐために家業に邁進している。

好きな動物はアデリーペンギン、ライオン。


清水しみず 明夫あきお

警視庁捜査一課第三特殊捜査係、通称”SIT3”(special investigation team 3)に所属。47歳で妻子持ち。

奏矢兄妹に事件の依頼をすることで、協力体制を取っている。個人としては、奏矢兄妹とは、十年来の知人である。

好きな動物はシェパード、セキセイインコ。

 夜も更けた、ある大学の研究室。校内には生徒どころか、教授たちまで帰宅しており、人の気配が一切しなかった。

その人が居ないはずの研究室で無精ひげを生やし、眼鏡を掛けた中年の男が見つめるは、鉢植えに植わった一輪の花。


「ようやく……ようやく、連れて来られた。”ハイマ・ネペンテス”」


 その花は、ジャスミンのような形の赤い花であった。他の植物と大きく違うところは、その植物の葉が丸まっており、まるでウツボカズラのような袋をしていたことであった。

男は指先をナイフで切ると、その指先を袋に差し入れる。


「あっ……はぁあ……」


 男は、血を流し込みながら、恍惚の表情になる。血を吸った植物は心なしか、葉に艶が戻り、花はより紅くなる。

しばらくの間、男は植物に血を与え続けていた。


 男は植物に心を奪われていた。もはや彼の世界には、彼とその植物しか存在していなかった。

恍惚の表情で血を与え続ける男。


 突然、男が居る研究室のドアがノックされる。

男は、植物から指を引き抜くと、素早く植物を棚の下の隠した。


「植野教授ー? 研究旅行からもう戻ってきたんですかー?」


植野教授と呼ばれた、植物に血を捧げていた男は、ティッシュで指先を押さえる。


「おお、早乙女か? どうした、こんな夜更けに?」


「ちょっと研究でやりたいことがありまして……気がついたら、こんな時間に」


「とりあえず、そんなところに居ないで、こっちに来たらどうだ? お土産もあるぞ」


「ありがとうございますっ。じゃあ、失礼しますね」


白衣を着た、早乙女と呼ばれた女学生が、研究室に足を踏み入れる。


「植野教授、今回のアマゾンでの現地研究、どうでしたか? 新しい品種でも見つかりましたか?」


「ん、ああ。有意義だったよ。もしかしたら、学会を揺るがすことになるかもな」


「本当ですか!? すごい、どんな植物なんですか!?」


「ははは。それは君も見た方が早いだろう。アマゾンで見つけた新種で、私が”ハイマ・ネペンテス”と名付けたんだ」


そう言うと植野は、怪しく目を光らせて、棚の下から先ほどの植物の鉢を取り出した。


「えっ……その、教授。検疫とかは……」


「まあ、君が気にすることはないよ。ところで、この植物の花は良い香りがするんだ。君も嗅いだらどうだ? ……きっとやみつきになる」


 早乙女は不安げになりながらも、その花の香りを嗅いだ。

すると、段々と早乙女の目がうつろになる。その状態で、早乙女は筆箱からカッターナイフを取り出すと、力任せに自身の腕を何回も突き刺した。白衣に血が飛び散り、血の斑点を形作る。

早乙女の腕から紅い血が滴り、その滴りはその植物へ注がれていく。


 その”ハイマ・ネペンテス”と呼ばれた植物は早乙女の血を受けて、葉はさらに青々と、花はさらに紅々と、そしてさらに肥大化していた。植野と早乙女の饗宴は、いつまでも続いていた。

 翌日、大学近くのゴミ捨て場に意識を失った状態で早乙女が発見された。大量失血により、死に瀕していたが緊急搬送された病院での処置が良かったのか、幸運にも命は助かっていた。


 当然ながら、警察は事件を疑い、早乙女に事情を聞くが、早乙女は『記憶が無い』としか答えなかった。

しかし数日後、早乙女は入院していた病室から抜け出し、行方をくらましたのであった。

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