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第6章-8 異世界より

ニセモノの生首は切断され、血をまき散らしながら床へと落下する。

床に落ちた生首は、床に落ちると同時に、ガラスが砕ける音を響かせた。

生首が、ガラス細工のように砕けたのであった。


 瞬間、ミラーハウスの至る所で、鏡が割れ始める。


「兄さん、動ける?」


「無理だ。肩を貸してくれ」


ジュリはジョンに肩を貸すと、足早に入り口を目指す。

まるで、2人を逃すまいと鏡の破片の雨が降る。

それはニセモノの最後の断末魔のようであった。


「兄さん、あと少しで外よ」


「ああ」


鏡の破片塗れになりながらも、2人は出口からの風が感じられるところまでたどり着く。


 あともう少しで出口、というところでミラーハウスが大きく揺れた。


「ジュリ、急ぐぞ!」


 ジョンは一瞬だけ振り返ると、すぐさま正面を向いてひた走る。

兄に釣られてジュリが後ろに振り返った時に、見えた物は崩れ始める天井、そして、

 

舞い上がる埃がまるで人の顔に見えた。


「しつこい女は、嫌われるわよ?」


ジュリは兄の胸に着けた閃光手榴弾を取ると、ピンを抜いて後ろに投げ捨てる。


 一瞬、世界は白く染まる。

次の瞬間には人の顔が崩れ、ただの舞い上がる埃に変化した。


 ジュリとジョンがミラーハウスを出ると、遊園地は先ほどまでの喧噪が嘘のように、以前に来たように暗く寂れていた。

遊園地の至る所でガラスの割れるような音が響く。暗闇の中、よくよく目をこらすとムカデが粉々に砕けて、灰のように消えていく様が見て取れた。


 

 ジュリはジョンに肩を貸しながら、遊園地の外に停めた車を目指して歩く。


「終わったわね」


「ああ。にしてもあのニセモノは何だったんだ?」


「鏡の向こう側から来たんじゃないの。ある意味、英雄だとは思うけど」


「どういうことだ?」


「だってニセモノからしたら、自分以外は異形の世界に来たのよ。異形を相手に1人で戦うなんて英雄でしょ?」


「考えようによっちゃあ、そうだな」


「まあ、こっちからしたら良い迷惑なんだけどね」


 ジュリとジョンは、動きを止めた廃遊園地を後にした。

2人が去った後の遊園地には、静寂だけが残る。

時々、うち捨てられた観覧車が、風に吹かれてもの悲しそうに鳴いていた。


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