22-13
ジョンは手榴弾のピンを口で引き抜くと、アンダスローの体勢で転がすように901号からあふれ出し始めてた黒い煙に向けて投げつける。
ちょうど901号室まで爆発するように時間調整して投げつけた手榴弾。古びた廊下を音を立てて転がっていく。
「ジュリ、伏せ、ろ……!?」
何かにぶつかり、手榴弾は動きを止める。
そして意志を持っているかのように投げた張本人であるジョンの元へと投げ帰ってくる。
「うおっ……!?」
ジョンは咄嗟に胸のサバイバルナイフを引き抜き、こちらに向かってくる手榴弾に向けて投げつける。
同時に階段へとジュリを突き飛ばし、須藤の服を引っ張りながら階段を転げ落ちる。同時に一瞬だけ辺りは明るくなり、同時に身体の芯を震わせるような衝撃が3人を襲う。壁に叩きつけられ、特にジュリはジョンと須藤の身体を受け止める形で押しつぶされる。思わずジュリの口から苦悶のうめき声が漏れる。7
「痛っ……」
「えっ、えっ」
「……901号室からだけじゃなかったのか」
額から血が流し、先ほど手榴弾が止まった辺りをジョンは見やる。
先ほどジョンが居た地点と901号室とのちょうど真ん中辺り、904号室の郵便受けからガス状の腕が伸びていた。ゆらゆらと陽炎のように揺れる腕、そしてジョンはハッと気がつくと須藤を脚で横に蹴飛ばして散弾銃M877 ”マスターキー”をぶっ放す。いつの間にやら、先ほどまで開けようとしていた901号室のドアの僅かな隙間から真っ黒なガスが漏れており、鋭いかぎ爪を持った腕を形成していた。あと一歩遅ければ肉まで裂かれていたであろう。ジョンは弾倉が空になると手早く中折れ式の弾倉を動かしてリロードする。重い音が何発も静かな団地に響き渡り、余りの音に須藤は耳鳴りで辺りの音が遠くに聞こえるだけになる。
「ああああ……!?」
須藤は安住の地を求めて階段を転げ降りるように降りるがすぐさま戻ってくる。
その須藤の謎の気配に振り返ったジョンが見た物は、腐乱してぐずぐずに腐り果てて性別すら分からない人型やや首つりで死んだのか舌が異様に伸びたスーツの男、腹と首から真っ赤に鮮血が流れた若い女など、先ほど探索したときには居なかったはずの団地の”住民たち”が姿を現したのだった。




