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22-7

どう見ても”異世界”のような光景。

空には雲1つなく真紫色に染まっており、雲がないにも関わらず蛍光色に近い青色をした雨がコンクリートの廊下に跳ねて流れる。普通の状況ではない。エレベーターから顔だけ出して外を見ていたジュリとジョンはエレベーターの中に頭を引っ込めると、お互いに眉をひそめる。



「こいつぁ、どういう状況になるんだ?」



「そうね。”まったく意味が分からない”って私も思うわ」



「……1度引くか。嫌な予感がする」



 ジョンはエレベーターの階数ボタンを何度も押すが反応がない。ジョンは中身が飛び出たリュックサックを背負うと、ジュリを先導する形でエレベーターから外へと出る。

ジュリもまた退路をふさがれたことにうんざり顔の表情になると、一歩、また一歩ゆっくりと外へと歩き始める。ジョンは警官帽を脱ぎ捨てて、代わりにヘッドライトの着いたヘルメットを身につけて散弾銃M877 ”マスターキー”を正面へと突き立てる形で警戒する。この散弾銃はレミントンM870のバリエーションの1つであり、米軍12ゲージの弾丸を装填して市街地戦に特化した、どんな扉でさえ破壊し開けてしまえる威力を持つことから”マスターキー”の異名を持つ。ジュリもまたいつでもチェーンソーを触れるように抱きかかえていたチェーンソーのスターターグリップを握り込む。



「おおぅ、余り触りたくない色をしてんな」



「触ったら溶けるかもね」



 そう言ってジュリは被っていた帽子を雨に翳す。

帽子に”青い雨”が当たった瞬間、帽子の繊維がどろりと粘液へと姿を変えて床へと(したた)る。その様子を見てジュリとジョンは眼を丸くする。



「あら、本当に溶けちゃったわ」



「つまり、このマンションからは出られないってことだな。 ……長期戦を見越して、荷物をいっぱい持ってきて良かったぜ」



 ちらりと背のリュックサックを見る。ある程度の食料、水、弾丸や爆破物をこれでもかと詰め込んだ己がリュックサックに頼もしさを覚える。

だが、持ってきた分だけの食料と水しかないということは、時間制限があることに他ならなかった。”青い雨”を飲めば恐らく身体に悪影響を通り越して致命傷になりかねない。水に期待できないのなら食料もまた望み薄なのは明らかであった。



 カタンッ。



 手前の部屋から聞こえた物音。

ジュリとジョンは咄嗟に飛び退くと、その音がした部屋の扉を息を殺して見やる。だが、少しの間待ってももう音がすることはなかった。




 ジョンは指でジュリに合図を送る。『俺が前、お前は後ろ』、ジュリもまた無言で頷くと、いつでもチェーンソーを始動出来るように身構える。

ジョンは散弾銃の引き金に指を掛けながら、空いた手でゆっくりとドアノブに手を掛ける。そして僅かに空いた隙間に身体をねじ込ませると、散弾銃を構えて中の様子を探る。



(暗ぇな……)



 ジョンは真っ暗な部屋に眼を凝らしながら、様子を窺う。

ここが元の団地と同じ構造であるならば玄関から四畳半のキッチン、その後に六畳間が続く部屋であるはずであった。



(……しっかし、さっきの音はなんだったんだ?)



 ジョンは思い出したかの様にヘッドライトのスイッチを押す。

LEDの強力な光が、一気に中を明るくする。そしてキッチンの中央に倒れている”ボロボロ”になった警察官の男を見つけるのだった。

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