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22-6

「はぁ~。疲れた……」



 ジュリはおばさんが消えたのを確認してから大きくため息を吐く。

そして思い切りエレベーターの壁へと寄りかかると、天井を仰ぐ。



「まったく、関係ない話まで広げすぎでしょ。最後には旦那さんの愚痴になってたわよ」



「はははっ! 受ける」



「笑い事じゃないでしょうに。 ……あれ」



 天井を仰いでいたジュリは、エレベーターの行き先階案内が点滅したことに気がつく。

先ほど何時間もエレベーターで上下した際には一度も他階から『呼び出し』などなかったのだ。1度全階を確認したときには、全ての階で『立ち入り禁止』のテープがべたべたと張られており、一般人がわざわざそんなエレベーターを使うことはないはずであった。



「ねぇ、兄さん。これ、イタズラだと思う?」



「あん?」



 扉につっかえ棒状態になっていたジョンは顔だけエレベーターの中に入れてその表示を見る。階数表記は『4F』、7階建ての団地のちょうど真ん中辺りであった。

ガタガタと閉まろうとする扉を力尽くで押さえながら、ジョンもまた怪訝そうな表情を浮かべる。



「んー、こりゃあ」



ガタガタガタッ。



 エレベーターの扉は閉まろうと何度も動くが、その度にジョンが脚でつっかえ棒状態になっているために閉まることはない。

閉まる→脚で踏ん張る→開く→閉まるを何度も繰り返す。



「こりゃあ、何だろうな?」



「……煩いから早く乗ってくれない? 行けば分かるでしょ」



「そうだ『……ガガッ…4…い……り……ます……ガガッ』」



「っ!兄さん、危ない!」



 ジュリは咄嗟に兄の袖を掴んでエレベーターへと引き込む。

同時にエレベーターの扉が鋭利な刃物のように金切り声にもにた金属音を出して異常な速度で閉まる。それと同時にエレベーターはそれ地震が暴れているかのように上下左右、轟音を立てて揺れながら上昇していく。



『……ガガッ…4…い……り……ます……ガガッ』



『……ガガッ…4…い……り……ます……ガガッ』



『……ガガッ…4…い……り……ます……ガガッ』



『……ガガッ…4…い……り……ます……ガガッ』



 何度も同じアナウンスがエレベーターに木霊する。

だがジュリとジョンは揺れるエレベーター内で身を守るのに精一杯で聞いている余裕などない。



「まったく、何だってんだ!」



 ジョンは頭を庇いながら怒りに満ちた声で叫ぶ。

まるで交通事故を起こしたかのようなエレベーター内。身体は壁や扉、天井、床、そしてお互いの身体や荷物にぶつかる。皮膚は裂け、唇は切れて天井へと飛沫が飛ぶ。




『……ガガッ…に…到着……し……ま……ガガッ』




 そのアナウンスと共にエレベーター内に静けさが戻ってくる。

床に倒れていたジュリとジョンも痛む身体を押さえながら立ち上がると、開いた扉から外を覗く。




「な、なんだこいつぁ」



「……おかしな場所に来てしまったみたいね」



 マンション自体はおかしいところはなかった。しかし、周りの風景は2人が目にしたコトのないものであった。 

2人の前に広がっていたのは”真紫に染まる鮮やかな空”と”ペンキのような真っ青な雨”が降る異様な世界が広がっているのだった。

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