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22-2

「ふぅん? それは興味深いわね」



 警察署の一室。

革張りのソファーに座りながら、ジュリは言葉とは裏腹に興味のなさそうに声を出した。そして出されたお茶請けのクッキーを1枚頬張ると、抹茶オレで流し込む。そのジュリの隣では手に持ったジッポを弄るジョンの姿があった。



「なぁ、あからさまにやる気のないのが目に見えてるんだが」



 対面に居る清水もまた、クッキーを頬張りながらジュリへと話しかける。

警官である清水は”怪異絡み”専門の部署にて事件を取り扱っており、何度もジュリとジョンの『奏矢兄妹』へと依頼をしており、個人的な付き合いとしても10年近くになる。そんな清水がこれほどまでにやる気のないジュリを見ることなどあまり記憶のないことであった。



「まあ。清水さんには何も思うことはないけど、ね」



「そうだなぁ。清水のおっさんからなら別に引き受けるけどな、うん」



「……まぁ、そう言わないで頼むわ。こっちは身内2人が行方知れずなんだ。な? 俺の顔を立てると思って」



 清水は机の上に出した書類を2人に向かって寄せながら、空いた片手で『お願い』のポーズをする。

そんな清水の様子にジュリは大きくため息を吐くと、書類を自分の方へと寄せる。



「『本人が責任を取らない挙げ句、後始末も他の人に投げる』なんて最低よね」



 書類の1枚目に書かれた事件関係者の名前を人差し指で叩きつつ、ジュリはわざと大きめな声で強調する。

ジュリの指さした先、そこには賀茂川 忠志の名前が書かれていた。そしてジュリは壁1枚隔てた隣の部屋をちらりと見る。



「……まあ、色々あるんだよ。アイツだって部下が1人怪死して、1人が行方不明。ついでに応援に来てくれた仲間にも行方不明者が出ちまったんだ。あんまり責めないでやってくれ」



「清水さん、優しいのね。自分の家族が誘拐されたときに追跡を邪魔されたのに」



「あれはあれ。これがこれ、だ。じゃあ、頼んだからな」



「ああ、まあ。清水のおっさんからの依頼じゃ仕方ねぇな。ほら、クッキーを食べてないで行くぞ」




 ジョンはジュリへと退室を促し、ジュリは食べかけのクッキーを急いで飲み込むと抹茶オレで一気に喉奥へと流し込む。

そして2人が連れ立って部屋の外に出て行くのを、清水は見届ける。




「……おい、もう2人は行ったぞ。そんな所に居ないで出てきたらどうだ?」



 清水がそう声を掛けると、隣の部屋から賀茂川が様子を窺いながら部屋へと入ってくる。

そしてジュリたちの座っていたソファーへと腰を降ろすと、清水へと頭を下げる。



「すみません、明夫さん。迷惑をお掛けしました。それに以前のあの娘さんの誘拐事件のことも」



「まあ、気にすんなって。あの誘拐事件だってお前はお前の仕事の本分をやっただけだ。さて、あいつらが美味いこと解決してくれれば良いんだけどな」



 清水は2人が去った方角を見ながら、ゆっくりと目を細めるのであった。

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