21-6
保守室を目指して階段を駆け上がり、最上階の7階はと辿り着いた巌とジョン。
ジョンはすぐさま『電気保守室 関係者以外立ち入り禁止』と書かれた小部屋を見つける。重そうな鉄の扉。ジョンは思い切りドアノブを回して開けようとするが、無情にも鍵が掛かっているために開くことはない。それに加えて鉄製の扉を破壊しようと発砲すれば、跳弾で自分自身の身を危険に曝してしまう。だがジョンの力では開けられない。ジョンは後ろに立つ巌に振り返ると助力を請う。
「巌さん、ちょっと力を貸してくれ!」
「2人がかりで無理にやったって開くわけないじゃないのよ~。それに、2人で引っ張るほどのスペースもないじゃないのさぁん。ジョンちゃん、少しどいて貰えるかしら」
そういうと巌はジョンを押しのけてライダースーツのポケットから工具を取り出す。
サイズは箸の半分にも満たない大きさの工具で、巌の大柄な体躯と比べると余計に小さく見えた。その工具を鍵穴に差し込んでからものの数秒で、カチリと鍵が開く音が響いた。
「柔よく剛制すってな。無理矢理は駄目よぉん」
「巌さん、ナイス! 早いとこ防火シャッターを開けちまおう」
ジョンが勢いよく保守室の扉を開けた瞬間、中から”真っ黒なもの”が飛びかかってくる。
牙を剥き、つばを飛ばし、咆吼を上げるそれは”猿”否、猿人間。ジョンは咄嗟に蹴り飛ばして、床に転がった猿人間の眉間に3発の銃弾をぶち込む。床に血と脳漿をまき散らしながら転がったそれを蹴り飛ばすと、ジョンは防火シャッターの操作盤を弄り始める。
「あらぁん、この人も被害者なのに殺すことはなかったんじゃないのかしら?」
「襲われたから反撃しただけだ。正当防衛、正当防衛」
がちゃがちゃと操作盤をいじくるジョン。数分ほどして操作盤のシャッター昇降ランプの点灯が消える。
だが、続いて他の場所もいじくり始める。そのことに巌は不審がり、ジョンの方を揺さぶる。
「ジョンちゃん、何をしているの? ほら、早く行きましょうよ」
「まあまあ、ちょっと待ってくれ」
程なくして細工を終えたジョンと巌は保守室から飛び出すのであった。




