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ex3-1

 ガサ、ガサガサッ。

大守 隆史(おおもり たかし)は何かを擦るような、かき分けるような不快な音と右耳の穴の奥の痒みで深い眠りから覚醒する。咄嗟に小指を耳穴へと乱暴につっこむと、ぐりぐりと乱暴に掻きほじる。少しして痒みも音もなくなり、その代わりに頭を打つような痛みが走り、軽く頭を振る。



(あれ、ここ、俺の部屋じゃ、ない?)




 頭痛を和らげるために指で眉間を押さえながら、あぐらをかいて辺りを見渡すとすぐ横で大きないびきをかく男の姿。男は隆史の友人であり、時折大学の一限の講義に間に合わないときには泊まらせて貰っていたのだ。

そしてすぐさま、昨夜のことを思い出す。



(ああ、そういえば昨日のサークル歓迎会の後、電車無くなったからコイツの家に泊めて貰ったんだっけ。 ……あれ、どこで昨日はコイツと会ったんだっけ? 飲み会には居なかったよな)



 隆史は痛む頭を軽く振ると顔を洗うためにのそりと立ち上がる。床には潰れた酎ハイの空き缶や中身が中途半端に残ったつまみなどが散乱しており、それらと友人を跨いで

フローリングに敷かれた薄いカーペットを踏みしめて狭いリビングを抜けて洗面台へと辿り着く。洗面台の蛇口を捻ると冷たい水が一気にシンクへとあふれ出す。その蛇口から流れる水を手で受け止めると、一気に顔へと掛ける。そしてタオルで顔を拭いていると、隆史の背後から声を掛けられた。



「隆史、起きるのはえーな。てかなんでお前、昨日ゴミ捨て場で寝てたのよ。流石にやべーだろ」



「あー、悪い、起こしちゃったか……って俺、ゴミ捨て場で寝てたの!?」



 先ほどまで寝ていた友人――神木 徹(かみき とおる)はあくびをしながら、驚く隆史に徹は言葉を続ける。



「いや、そんなに驚かれても……。でろでろに酔ってるお前をゴミ捨て場で見つけた俺の方がびっくりしたわ……」



「あー……いや、昨日サークルの飲み会で楽しく飲んでたのは思い出せるんだけど。先輩が持ってきたウイスキーに手を出したところ辺りから記憶がない」



「……絶対原因はそれだろ。ところで午後の必修は出るだろ? 講義までここに居るか?」



 隆史はごそりとポケットからスマートフォンを出すと時刻を確認する。

時間は午前10時33分。どこかで時間を潰すには微妙な時間だ。



「あー、いや。時間まで徹の家に居るわ。ついでにシャワー浴びたいからバスタオル持ってきて」



「んーまあ、すぐに持ってくるわ。なんか臭うし」



「俺もそう思ってた。じゃ、よろしくー」



 徹はバスタオルを取りに部屋へと戻り、隆史はシャワーを浴びるために脱衣所へと入る。

そしてそのまま熱いシャワーを被りながら、徹に奢る学食について考えるのだった。

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