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20-1

明くる日の日曜日の朝。

ジュリはベッドから起床すると2階の自室から1階のリビングへと朝食を取りに階段を降りていく。



「あら、兄さん。早いわね。まだ朝の6時よ」



 キッチンに立つ(ジョン)にジュリは声を掛ける。

ジョンは紺の寝間着に星の刺繍が付いた青のエプロンを身につけ、フライパンでベーコンを焼いていた。肉の焼ける良い匂いがキッチンを充満している。



「ん、ああ。目が覚めちまってな。今、トースト焼いてやるから顔でも洗ってこい」



「やった。兄さん、パンに乗せる目玉焼きは半熟でね!」



「ああ、はいはい。分かってるよ」



 もう二十歳が近いというのに、まるで無邪気な子供のように洗面所へと消えるジュリ。

『いつも大人ぶっているが、まだまだ子供だな』、いくら年齢を重ねても妹は妹。小さい頃に己に手を引かれて半泣きで居た妹のままのイメージがジョンのまぶたに映る。



「っと、早いとこアイツが戻ってくる前に朝飯の準備をしなきゃな。まず卵を2つと黒こしょうと……ん?」




 朝早くのこの時間帯。突如玄関のチャイムが鳴る。

ジョンは怪訝な表情になり、手に持っていた卵を冷蔵庫へと戻すとエプロンをイスの背に掛ける。そしてスリッパをパタパタと鳴らしながら玄関へと向かう。磨りガラス越しに見えるのは、背の低い、黒い人影。ジョンは頭を捻り、この時間のアポイントなどがないか考えるが己が忘れるならともかく、そういったことに厳しいジュリが忘れるわけがない。



「おいおい、新聞勧誘ならこんな時間に来ないでくれよ」



「あら、ワタクシが新聞勧誘なんてするとでも?」



「おっ……?」



 そこに居たのはポニーテールで髪をまとめた篠生 鈴(しのう りん)。家の前に白のベンツを横付けにし、手には重そうにトランクを持つ。

そして仰々しそうにトランクを持ち上げると、ジョンに上目遣いで尋ねる。



「ワタクシ、少し相談したいことがありまして来ましたの。中に入れてくださるかしら?」



「……あんた、アポイントぐらい事前に取れよな」



「緊急事態なら仕方ないことだと思いません?」



「はぁ~。5分待ってくれ。取りあえず着替えてくるから」



 ジョンは玄関扉を閉めるとすぐに鍵を閉める。

そしてジュリに仲が悪い鈴が来たことを伝えなければならないことに頭を抱えるのだった。

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