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19-6

 人気が薄くなった高尾山の麓。国道沿いとはいえ、道路を囲うように木々が生い茂っていた。

血の臭いを頼りに辿り着いた場所はそんな人気のない場所の、朽ちかけた一軒家。家の壁にはツタが絡みつき、屋根の一部は自然に飲み込まれていた。遠くからで分かる、住民の居ない家。



「あの家から血の臭いがするわ。そこまで強く臭いが出ていないから、今までの捜査状況と同じなら指も切られてないでしょ」



「そうか」



清水は車のエンジンを切ると、腰のベルトに吊り紐(ランヤード)で繋がれたリボルバー拳銃『M360J SAKURA』を取り出して装填を確かめる。

装弾された実弾は5発。それを確かめると、邪魔になる吊り紐(ランヤード)を外して運転席の扉から降りようとする。



「おいおい、清水のおっさん。興奮すんなって」



「早く助けに行かねぇと悠の指がちょん切られちまうだろ!」



「そうね。早く行った方が良いけど、無闇に突っ込んで悠ちゃんを人質に取られるのも嫌だしね」



「……なら、どうするんだ?」



「そうね、ちょっとしたアイデアがあるんだけど」



「あの、僕は何をしたら……?」



 ジュリが”アイデア”に付いて話そうとしたとき、今まで口を閉じていた雅司が横から声を上げる。

清水とジョンは話の腰が折られたことにややムッとした表情を見せるが、ジュリは眉1つ表情を変えずに雅司に視線を向ける。



「雅司君はそうね、”哀れな被害者兼通報者”になって欲しいのよ。筋書きは”何かの理由”でこの場所に来た雅司君は”何かの怪異”に襲われて、私と兄さんをここに呼んだと。”たまたま”怪異の住む家で犯罪者が居たからついでに国家への奉仕で犯人を捕まえたと。それで私たちは現場の後始末のために担当の清水さんを呼び出したと。どう、これで? だから雅司君はその”何か”についてよく考えといて頂戴」



「それ、さっきの薄気味悪い刑事に見られているから駄目なんじゃねえか?」



「兄さん、それならたぶん大丈夫よ。”目撃者”が2人も居れば状況証拠でなんとでも出来るわ。雅司君が襲われたことにする怪異も溶けたとか言えば良いしね。後は清水さんが言いくるめてくれれば、丸く収まるわよ」



「……よし、なら”鼻垂れ”は置いて早く行こう。時間がないんだ。ジュリ、お前のアイデアってなんだ?」



「それが途中だったわね。なら、まず……」



 数分後、作戦会議を終えた清水は静かに車から降りていき、その後に続くようにジュリとジョンも車から降りていく。

清水はリボルバーを握りしめ、ジョンは胸にサバイバルナイフを数本アクセサリーのように着けていた。そしてジュリは一体どこに隠していたのか大人の腕ほどの長さはある大型チェーンソーを肩に担いでいる。



「……じゃあ、頑張ってくださーい」



 雅司は『誘拐犯がミンチにならないことを』祈りながら、1人残された車内で3人を見送るのだった。

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