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清水はパトカーのサイレンを鳴らしながら、国道を猛スピードで駆け抜ける。
そのパトカーの後部座席にはジュリとジョンが並んで座っており、揺れる車内で”指取り連続誘拐犯”についての資料を眺めていた。
・今まで3件の誘拐事件発生。
誘拐時の目撃情報や手口から同一の犯人と断定。被害者はいずれも小学生高学年から中学生までの女子生徒。誘拐発生後12時間前後で指の生爪 (1件目左中指、2件目右親指、3件目左中指)が切手のない状態で送付されてくる。
・誘拐後24時間後。
被害者から家族に向けて電話が掛かってくる。いずれの事件も10秒程度で通話が切られる。犯人からの要求はなし。
・誘拐後168時間後。
1週間後、山手線の男性トイレ内で身体の一部分が発見される。1件目秋葉原駅南口トイレ。2件目渋谷ハチ公前公衆トイレ。3件目西日暮里駅東トイレ。発見場所の地域からバラバラとなった被害者の部位がレストランの生ゴミや空き缶回収箱から見つかる、司法解剖の結果、切断面に生態反応が見られたことから、生きたまま切断されたと断定。被害者の身体の部位はほとんどが発見されたが、必ず左手薬指だけは発見できず。犯行が都内であることから犯人は都内に住んでいる、もしくは住んでいたことのある人物と推測。
「今14時間ぐらいは誘拐されてから経っているのよね。まさか」
ジュリは資料から目を離して清水の方を向く。
運転席越しとはいえ、垣間見れる清水の怒りに満ちた表情が全てを物語っていた。
「ああ、昼ぐらいにな。うちのポストに投函されていたよ。娘の、悠の小指の生爪がな。いつも爪に塗っていたマニュキアで分かったよ。それでお前らに連絡を入れたんだ。女房は生爪を見て卒倒しちまうし、どうしようもなくてな」
「……そう。ああ、誘拐現場は大体は分かっているのよね?」
「ああ、八王子の狭間駅から歩いて15分ぐらいのところだ。悠の通学鞄が落ちていたから、恐らくそこだろう」
「そしたら、誘拐現場に向かう前に八王子駅に迎えに行ってくれないかしら。1人、迎えに行って欲しいのよ」
「時間がないって話だっただろう? 誰を迎えに行くつもりなんだよ」
「知り合いが八王子の方でアルバイトをしていたのを思い出したのよ。さっき、連絡を入れたら今ちょうどバイト中ですって」
「おいおい、ジュリ。その知り合いが誰か知らねぇけど清水のおっさんの娘さんの命に関わるだろ」
「そうね。だからこそ助っ人が欲しいのよ。私や兄さんじゃなくね」
速度を出しているせいでガタガタと揺れる車内。
清水は真っ直ぐに前見て運転をしながら、重い口を開く。
「……八王子駅だな。分かった。ちなみに誰なんだ? その、助っ人って」
「雅司君よ」
ジュリの口から出たその名前にジョンは驚愕の表情を浮かべる。
一方で運転席からフロントミラーでちらりと様子を窺ったが、そのジョンの様子にただただ眉をひそめるだけであった。




