第3章-7 ガンプと呼ばれた怪物
瀕死の剛を篤と雅司の二人がかりで、恐怖で動けなくなった奈緒はジュリが、それぞれ肩を貸しながら外に向けて歩く。ジュリと奈緒が先に外に出て、次に雅司たち3人が続こうとした。
扉を押して外に出ようとしたとき、剛だけが見えない壁にぶつかった。
「はっ?」
次の瞬間、剛以外の4人は病院内からの突然の強風により、外へとはじき飛ばされる。
「な、なんだ!?」
雅司は突然のことに混乱する。
そのとき。
\ドッワハハハ/
大きな、とても大きな笑い声が病院内に響いた。
「た、たす、助けてくれぇ!」
剛は見えない壁に拳を叩きつける。そのすぐ後ろに、首のない影。
「ガ、ガンプ……」
ガンプは剛の襟を掴むと、そのまま踵を返した。
ガンプと剛は暗闇へと消える。
「た、助けなきゃ……」
雅司が、ガンプを追って病院内に入ろうとするのを、ジュリが肩を掴んで止める。
「無理よ」
「で、でも……」
「首を落とされても生きているのを、どうやって殺すの?それに……」
「それに?」
「彼は今までのツケを払っただけだわ」
そう言うとジュリは奈緒に肩を貸して、街へと歩き始めた。
後ろからは、笑い声と剛の悲鳴が聞こえていたが、すぐに聞こえなくなった。
雅司は少し先を歩くジュリを見て気がつく。車のキーは剛が持っていたことに。
雅司は一度病院へと振り返ると、ジュリと同じく、街へと歩き始めた。
ジュリの隣を歩く雅司は、疑問をぶつける。
「なんで……そんなに冷静なの?」
「厄介ごとには、慣れているからよ」
そう言うと、ジュリは歩みを早めた。
雅司も歩みを早めた。そのとき病院から、風に乗って笑い声が聞こえた気がした。
街に着いた4人は、すぐに警察に通報した。
通報を受けて廃病院の探索に向かった警察は、何も見つけることは出来なかった。
ガンプも、紫苑も、剛も、彼らが置いてきた車さえも。
結局、彼らの通報は悪質な通報として、警察から絞られることになった。
ジュリは考える。剛は今までのツケの精算をしたのを見て、怪異を狩っている自分にもいつかツケが来るのだろうかと。
そのときが、早く訪れないことをただただ思うのであった。
\ドッワハハハ/
後日、その病院には頭と腕が欠損した化け物が出るという噂が、まことしやかに流れるようになった……




