17-10
「うぅるぁああぁ!」
獣じみた野太い咆吼。
巌は両手に金色のガントレットを嵌め、目の前のマネキンを殴り飛ばす。マネキンは哀れにも頭部は大きく砕けて、破片が宙を舞う。
「フー、フー……」
チリチリと肌に感じる熱気と痛み。巌の肩の辺りは事故の衝撃から裂けて、金色のガントレットを紅く彩る。
巌は狂戦士のように迫り来るマネキン達を殴り、砕く。
「巌さん、ちっとは落ち着いてや」
巌の背に迫る1体のマネキン。音もなく縦に切られて床へと転がり落ち、革のブーツの靴底で粉々に踏み抜かれる。。
すらりと伸びた抜き身の日本刀。それを手に持つ結衣が巌を諌めるように声を掛けた。
「あ、ああっ! そうね、あたしったら。ちょっと興奮しちゃったわ~」
「全く……。そういえば奏矢……じゃなかったジュリさんは?」
もはや荷台は完全に火に包まれ、トラックに近寄ることは難しくなっていた。
一緒に火に追われて荷台から脱出したはずのジュリの姿が見えなかったのだ。
「……ここに居るわよ」
大型チェーンソーを手に持ち、焦げた上着の袖を引き千切りながらふらりと現れる。
横に現れたマネキンを蹴り飛ばしながら、何事もないように辺りをぐるりと鼻先を向ける。
「あら~、ジュリちゃん。そこに居たのねぇん」
巌はマネキンの頭を両の手で掴み上げながら、そのままジュリの方を振り返らずにギチギチと締上げる。
そのままマネキンの首を力尽くでへし折ると、トドメと言わんばかりに殴りつけた。
「で、あたしたちはなんでマネキン狩りなんてやらされているのかしらぁん? ……九尾欠けは近くに居るんだろう?」
「ええ、すごく近いわ。臭いがするもの」
「辺りにはそんなのは見えまへんけどなぁ」
結衣は日本刀を鞘に収め、居合いの型を取りつつ辺りを警戒する結衣。
最初はかなり居たはずのマネキン達も残りは僅か。だが、ジュリの言う銀狐、九尾欠けの姿は近くにはない。
『キャハハハハッ』
「っ!?」
突如、女の耳障りな甲高い笑い声が辺りに響き渡る。
巌は咄嗟にその声のする方へともっていたマネキンの頭を投げつける。
だが、その頭は何もない空間から現れた豪炎によって宙で蒸発して霧散する。
その豪炎はマネキンを蒸発させるだけに留まらず、まるで一枚の壁のように巌を包み込む。
「巌さん……」
結衣の鼻腔に髪の毛を焦す嫌な臭いが突き刺さる。
先ほどまで巌が立っていたはずの場所。だが、そこには赤子のように身をすくめて燃える”モノ”があるばかりであった。




