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怪異に乙女とチェーンソー  作者: 重弘 茉莉
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17-7

「にしても奏矢さん、目が見えなくても大丈夫なんか?」



 一同は2トントラックの荷台に押し込まれて、一度ジュリたちの家に寄った後に九尾欠(くびか)けと出会った赤羽の繁華街へと向かう。

運転手は清水で、荷台にはジュリとジョン、巌と結衣が対面式に座っていた。



 目が見えずに手探りながらも、感覚のみで自身の超大型チェーンソーの手入れをするジュリに向かって結衣は心配に声を掛ける。

ジュリは両目を閉じた状態で事も無げに答える。



「見なくても分かるわよ。いつもしていることだから」



「うちも毎日、”この子”に触ってるけど目をつぶったままじゃ指きりそうで怖いわ」



「すごいわねぇん。それにしても、噂には聞いてたけど女の子が持つ獲物じゃないわよねぇ、それ」



 巌は顎でジュリの持つ超大型チェーンソーを指す。

そのチェーンソーは刃渡りが1メートル、エンジン部と合わせて総重量が40キロを超えるシロモノであった。そんな無骨なジュリの獲物に、巌は半ば呆れた様に声を掛ける。



「これ重たいから、あんまり使いたくないんだけどね」



「うちにはそんな重たいもの振り回せんわ。どうやったらそんな重たいもの持てるようになるん?」



「慣れよ。そのうちに持てるようになるわ」



「女の子のあたしもそんな重たいもの持てないわぁ。お箸よりも重たいものは持ったことないもの」



「巌さん、アンタは男やろ……」



 結衣と巌はまるで漫才コンビのように声を掛け合う。

その様子を黙ってみていたジョンは、フロントガラスに映る景色をただただ見つめていた。だが何かに気がついたかのように反応すると、運転席に居る清水に声を掛ける。



「清水のおっさん、次の路地近くから窓を開けてゆっくり目に運転してくれ」



「ん、ああ、分かった。……近いのか?」



「さあな。だがさっきはここら辺の路地に居たからな。ジュリが臭いを追えるはずだ」



 ジョンは後ろに居るジュリを親指で指さす。

ジュリはチェーンソーをメンテナンスする手を止めずに、顔を上げて九尾欠《くびか》けの臭いを追う。



「……ここからあまり離れてないみたい。たぶん3キロもない場所にいると思うわ」



 その言葉を聞くと同時に、車内の空気が張り詰めたものになる。

そして先ほどまで軽口を叩いていた巌の表情が険しいものになるのだった。




「……ほう」



 それだけ言うと巌は無言となる。

その横でジョンは大型拳銃のPfeifer Zeliskaの調整をしていたジョンが弾丸を装填し終えていた。



「さて、借りは返さねぇとな」



「ジョンさん、物騒なもん持ってはるなぁ」



「そういうあんただって物騒なもの持ってんじゃないか。日本刀だろ、それ。銘刀か?」



「うちのこれは銘刀じゃありません。無名ですが良いものですよ。うちは烏切《からすぎ》りって付けてますけど」



「っ! 掴まって!」



 ジュリは何かに気がついたように叫ぶ。

巌、結衣、ジョンは咄嗟に座席の縁へと掴まる。



「ジュリ、どうしたっ!?」



 ジョンが質問を投げかけるが、その答えは運転席の清水の咆吼によってかき消される。



「おおおぅおおおおー!??」



 フロントガラスが火に包まれ、先がまったく見えなくなっていたのだ。

そして文字通り火車となった車は大きく蛇行し、横転してしまうのであった。

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