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――携帯電話を握り、緊張した顔つきになる清水。そして“銀尾の女”という清水の言葉を聞いて、巌と結衣にもまた緊張が走る。
「おい、ジュリ。お前、いったいどこでその”銀尾の女”に遭ったんだ。それにもっと情報が欲しいってことはお前、そいつを取り逃がしたな?」
「正解よ。危うく北京ダックのお仲間入りするところだったわ。中華飯店でご飯を食べようとしたら逆に料理されそうになるなんて、とんだ皮肉ね」
自嘲するように笑うジュリ。ジュリが半ばおかしそうに喋る一方で清水は焦りながら話す。
「おい、そいつにはどこで遭遇したんだっ!? それにお前、今どこに居るっ!?」
「そこまで声を大きくしなくても聞こえるわよ。その怪異と遭ったのは赤羽よ、で私と兄さんは今病院よ」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「ま、ね。とりあえず、兄さんとそっちに資料を受け取りに行きたいんだけど、良いかしら」
「そうか。いやこっちにも紹介しておきたい人たちがいるし、どっちにしてもこっちに来てくれ。場所は特殊捜査係で」
「紹介したい人なんて珍しいわね。まさか、再婚でもするの?」
「あほか。今のかみさん以外に付き合う気なんざない。冗談を言う暇があるなら、早くこっちに来い」
「はーい。じゃあすぐに向かうわね」
携帯の通話が切れ、画面には『通話終了』の文字が並び、清水は大きくため息をついて携帯を上着の内ポケットへと滑り込ます。
黙って聞いていた巌と結衣は通話が終わった瞬間、口を開く。
「あーちゃん、九尾欠け《くびかけ》が出たんなら、あまり時間がないわよ。あたしたちも早く動かないと、またどこに行っちゃうのか分からないわ」
「まぁ待て巌。九尾欠け《くびかけ》を探すのに、どちらにせよあいつらの協力が必要になる。特に兄妹の妹の方の嗅覚がな」
「んー、あーちゃんがそう言うなら、待った方が良さそうねぇ」
「……九尾欠け《くびかけ》の相手をして冗談を言えるんは東京の人たちって、なかなか面白いなぁ。どんな人たちなんやろ」
「まぁ、紅茶かコーヒーぐらいしか無いがゆっくりしてくれ。巌はブラックコーヒーだったよな? えぇと仲小路さんは?」
「うち、紅茶でお願いします。あと下の名前で呼んで大丈夫ですよ」
「流石、あーちゃん。あたしの好み、分かってるぅ」
巌は指を指し、体をくねらしながら清水にウインクをする。
その様子を尻目に、清水はコーヒーと紅茶を用意するべく給湯室に向かうのであった。




